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夏になる頃へ  作者: masaya
三章 四月の雪
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プロローグ

息をそっと空へと吐いてみる。口からは季節外れの白い息がゆらゆらと銀色の空へと消えていく。静かに手を伸ばしてみる。ふわりと冷たい空気が掌に残るだけで白い息は掴めない。誰かの事を思っていると、もうこんな時間。時計に目をやると午前三時過ぎ。ちらちらと季節外れの雪が降っている。ぐるぐると同じ言葉が頭の中に浮かび上がる。頭を何度も振り忘れてしまおうとするけど、どうしても同じ言葉を思い出してしまう。ここまで自分自身が、言葉一つで動揺してしまうものか。と、苦笑いを浮かべてしまう。気を紛らわせようと開いていた窓から顔を出してみる。頬をチクチクと冷たい空気が刺してくる。

「四月なのに雪が降るって珍しいな。雪が降っているのに、星が見えているってのも凄いや。明日は早く起きなきゃいけな・・・そうか、今春休みか」

誰に言うわけでもなく、尋は大きな独り言を口にしてしまう。きっと、じっと黙ってしまっていると、また、あの言葉を思い出してしまうんだろう。携帯電話を手に取り、誰かに連絡を取ろうとして見ても、流石にこの時間では迷惑が掛かってしまう。普段の尋ならば、きっと相手の事を考えて行動できる。が、今回ばかりはどうしても、誰かと会話をして、雑念を払いたい一心でアドレスを確認し品定めをしようとしていると、一通の着信通知画面が出てくる。画面を見た瞬間、ドクン。と、胸が鳴る。ゴクリと生唾を飲んでしまう。一度、深呼吸を済ませ、着信ボタンを押す。

「夜遅くにごめんね。もしかして、起こしちゃったかな?」

相変わらず、彼女は優しい声で話しかけてくる。電話越しでも伝わる、優しさ。つい、口元が緩んでしまいそうになる。きっと、デレデレしていたところで、相手には表情が伝わらないことぐらい分かっている。分かっているけれど、デレデレしている自分が少々気持ちも悪いため、小さく、聞こえない程度に息を吐き落ち着かせる。

「寝てなかったよ。外を、見ていたんだ」

尋の言葉を聞くなり、電話越しに嬉しそうな声が聞こえてくる。やっぱり、尋ちゃんは相変わらずロマンチストだよね。なんて、相変わらず、高校生にもなってたまに、子ども扱いをしてくる。けれど、それも嫌じゃあない。

「私もね、色々と考え事をしいてさ、寝れなくて外を見たら、雪が降っていて。けど、星も見えたから尋ちゃんも見てるかな。って思って」

「あ、ありがとう」

「ありがとう?尋ちゃんって相変わらず、たまに、変な事を言うときあるよね」

電話越しで笑い声が聞こえてくる。尋もまた、なんでお礼なんて言ったんだろうね。なんて笑ってしまう。しばらく、雑談をしていると、ふと、思い出したかのように、

「そ、そう言えばさ。前に尋ちゃんに言ったこと・・・あれ本気にしないでね。なんか私も良く分かってなくて」


トクン。ともう一度大きく。胸が鳴り、また、ぐるぐると同じ言葉が脳裏をよぎる。




“ねえ?尋ちゃん。私ね・・・私も本当は・・・”


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