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夏になる頃へ  作者: masaya
一章 恋の妖精と時々幽霊
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プロローグ

キラキラと輝く星を眺めつつ僕はふと横を振り向く。静かに寝息を立てる一人の少女。昔からの友人でもあり昔からの片思いの相手でもある。きっと彼女は僕の事なんて血の繋がっていない家族ぐらいにしか思っていないだろう。けれど、それだけでも幸せだと思う。高校二年生にもなってこう言う風に気を使わず一緒に好きな人と居れるなんて幸せ以外の言葉でどう表現していいのか分からなくなる。心は暖かくなるし自然と笑顔にもなってくる。自然と彼女の事を考えているだけで笑顔になってしまう。

「んあ・・・ごめん。寝てた」

眠たい目を擦りながら肩に凭れかかっていた頭を上げ隣に座ってくる。肩が軽くなり自然と両肩を無意識に回してしまいなにを気にしたのか謝罪の言葉が向けられてくる。

「ごめん。私が肩を枕にしてたから・・・痛かった?」

「あ、いや。そう言う意味じゃなくて・・・なんとなく!」

言葉を聞きなんとなく納得したのか、そっかそっか!なんとなくか!。と、微笑み背伸びをしつつ夜空を見上げる。無数の星が目に映り自然と少女は口を開け驚いている。

「凄く綺麗だね。私、こんなに綺麗な星を見たの久々かもしれないなっ!」

「まあ、最近は梅雨で雨が多かったからね」

僕の言葉を聞くと、ニシシ、なんて無邪気な笑顔を向け笑ってくる。無防備な昔から変わらない相変わらずな笑顔につい、視線を逸らしてしまう。それでも聞こえてくるのは悪戯っぽいだけど聞いていて不愉快じゃあない笑い声。

「な、なに?僕、なんか変なことを言ったかな?」

「んーん。梅雨は今日明けたって天気予報で言ってたよ。よかったね!これでほぼ毎晩天体観測が出来るんじゃない?」

「ほぼって」

「だぁって!梅雨が明けたからって雨が降らないってことはないでしょ?だから、ほぼって言わないと!いつ文句を言われるか分かりませんからね」

「そーですか!」

「そーなんです!」

足をバタバタと動かし星空を向ける彼女の横顔に見蕩れてしまう。すると、あれだけ感動して見ていた天体観測に飽きてしまったのか近くに置いてあった本をペラペラとめくり始める。

「うわー!これ新刊だよね!」

器用に彼女は月の光、星の光のみで読書を試みるがすぐに本を閉じてしまう。当然と言えば当然の挫折。月明かり程度で読書なんてしようと思えば出来るけれど漫画になるとより細かい表情等が見えないため向かない。頑張っても小説などは可能かもしれないけれど。当然のように諦めバタバタと足を揺らし、体も揺らし始める。その子供っぽい彼女の仕草に気がつかれないように微笑む。もしも、微笑んでいることが気が付かれてしまえば色々と面倒くさいことになりかねないため極力、彼女の事を思いほほ笑んでいる時は気がつかれないようにしている。友人からは気持ちが悪いなんて言われてしまうけれどそれもまた仕方がない。好きな人に気持ち悪い。と、思われなかったら別に他の誰かに気持ち悪いと思われてもいい。すると、沈黙を破るように聞いたことがある音楽が鳴り響く。その曲は市販では手に入ることが出来ない。それはそう。僕の幼馴染でもある清水香織の彼氏が彼女の為に作曲をした曲なのだから。

「ごめん!ちょっとたけから電話だからでていい?」

「なんで、僕に断るんだよ。どうぞ、どうぞ!」

精一杯の笑顔を作り自分の気持ちを悟られないように促す。香織も笑いながら電話に出ると僕と一緒に居るときよりも楽しそうな声色、笑顔で話しを始める。近くに居るのに何故か遠く感じてしまう。よく読む漫画に僕の一番近い心境が書いてあった。昔から近い異性の友達ほど彼氏、彼女になる距離が遠いって。本当にその通りだ。昔、同じように漫画を見ている時は想像でしか漫画の主人公の気持ちが分からなかった。けれど、実際に体験してみると予想以上に苦しいものだった。

「ダメダメ」

気を紛らわせるためポケットに手を入れ携帯を開くが案の定、誰からもメール、着信の表示はない。画面を閉じ何度も、何度も開き閉じを繰り返してしまう。何度、このパカパカを繰り返したことだろう。いい加減に液晶とダイアルキー部分を繋ぐ場所が馬鹿になってきてしまっている。

「いい加減、機種変しなきゃな・・・でも、お金ないし」

会話をする相手も居らずただ、僕の好きな人が好きな人と話しをする楽しそうな話しを聞きながら空を見上げることしか出来なかった。時間にして十分弱だろう。僕にしたら随分と長い間電話していたと感じてしまう。

「ごめん、ごめん!なんか新曲が出来たらしくて聴かせてもらってた!あと、ひろちゃんにもよろしくって言ってたよ!」

「流石、軽音楽部一年にして部長になっただけあるね。曲を作るなんてなかなか出来ないよ」

「ふっふっふ。私の彼氏は最高に格好良いからね!」

「御馳走さまでございます」

お腹いっぱいです。と、言わんばかりに頭を下げると香織も笑いながら、よきにはからえ。なんて楽しそうに言葉を返してくる。香織が笑っているだけで幸せ。彼氏(たいせつなひと)が居る人を好きになるなんて最低なことなんだって思うけれど今はこうして思い続けてもいいかな?ただ、幼馴染の友人の一人だっていい。それだけで幸せなんだから。



「で?」

明らかに不満、怒りが込められた一言。これだけでもの凄く怒っていることが分かってしまうのが怖い。熱もこもり心なしか普段人が話しをする言葉よりも重量がある気がしてしまう。何故か、僕は自分の部屋で電話相手に絶対に見えないのに背筋を伸ばし正座をしてしまう。防衛本能がそうしろと命じていた。

「で?とは・・・えっと、どう言うことでしょうか?紫穂さん・・・?」

「なんで最後に疑問系?てか、幼馴染だったらそこに私も呼ぶべきだったじゃん!そしたらアシストしたし!」

電話越しで僕に対して怒っているのか自分が呼ばれなかったことに怒っているのか分からない言葉を鋭い速度で投げつけてくる。言葉の喧嘩では確実に叶わない相手であり僕の良き理解者でもあり相談相手でもある。口調こそきつめの事が多いけれどいつも彼女には助言を多く貰っている。香織に彼氏が出来た時にも慰め、一緒になって泣いてくれたのももう一人の幼馴染でもある平木紫穂。

「いや、呼ぼうとしたんだけど、」

「結果的に呼ばなかったんだから一緒!言い訳を言っていいわけ?」

「・・・」

「ん?」

この様にたまに天然(ナチュラルボケ)を入れてくるところが困ってしまう。本気でやっているのわざとやっているのか分からなくなる時があり、どう言う反応をしたら正解なのか未だに分からない人が多い。幼馴染と言うこともあって僕は、まあ、とりあえずは流すことができるけど、他の友人たちは・・・。間を置き何故、紫穂を呼ぶことが出来なかったのか理由を話すと、頭もいいことが幸いしすぐにけんけんとした口調は収まる。どちらかと言うと僕の思考よりも呼ばれなかったことに対して怒っていたようである。

「でも、ひろは香織のことが好きなんでしょ?」

「・・・」

紫穂に対して自分の気持ちを言っているのだけれどどうしても言葉に詰まってしまう。いつもなら即答で、好きだ。と、言えたのに今回は先ほど楽しそうに電話をしていた香織の横顔が出てきてしまい言葉に詰まってしまう。ちょっとした沈黙に紫穂は何かを悟ったのか小さく咳払いをしてくる。

「どうしたの?」

「あ、いや。ごめん」

「・・・はぁ・・・まっ!言いにくいんだったらすぐに言わなくてもいいよ。とりあえず!自分の頭で整理、整頓して!それでも嫌なことを思い描くようならとっとと寝てスッキリする!!分かった!!」

返す言葉を許さない勢いにただ、はい。と、返事をすることしか出来なく紫穂もひろの言葉を聞いて満足したのかすぐに電話を切り携帯からは無音しか聞こえなくなる。携帯をベッドへと投げ部屋の電気を消しカーテンを開ける。淡い月の光がゆらゆらの夜風に乗り部屋へと入ってくる。月明かりでしばらくは見えなかった星たちも瞬き始める。人差し指を月へと向け、その指をアルタイルへと線を描いてみる。

「流石に、流れ星は流れないよね」

自分の行動に恥ずかしさを覚えたのか苦笑いを浮かべながらしばらくの間、瞬く星を眺め夜風に当たっていた。ふと、夜風につられて懐かしくもあり香織が言っていたことが本当だ。なんて、思いほほ笑んでしまう。

「あ、夏の匂い。本当に梅雨終わったんだ」

秋鹿ひろの恋物語はこうして始まる。

最初に、つたない文章ですが読んで頂きありがとうございました。

始めましての方は始めまして。他の作品を見て下さったことがある方はいつもありがとうございます。今回は夏にも近づいてきておりますし私の得意?いや、好きなジャンルの作品を書かせて頂こうかと思い上げさせていただきました。よろしくお願いいたします。


2015/06/12

※誤字訂正

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