表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヨゴレ部屋の恐怖

作者: くめきち

 大学生Aは,まったく部屋を片付けようとしない,いわゆるヨゴレ大学生であった。


 彼の部屋は惨憺たる有り様で,食べかす,ゴミ,使用済みの食器が放置されていた。他にもあるが一つ一つ述べていくとキリがない。それはもう大変な異臭腐臭であったが,彼はファブリーズをまんべんなく噴射してそれで満足した。


 そんな部屋であるのだから,やはり虫が湧いた。同じように殺虫剤をまんべんなく撒いて満足した。しかし根本が絶たれていないのでどんどん湧くし,虫たちが薬の耐性を持って蘇ってくるしで負の連鎖が止まらなかった。だが彼は気にも留めなかった。


 右手にファブリーズ,左手にゴキジェットプロを持って乱射して,「ふぅー」と一仕事終えたような面をするのだから本当にどうしようもなかった。


 夜,汚らしい万年床で目を瞑っていると,Aは視線を感じた。いきなり,闇の中から誰かが見ているような,そんな気がした。そんな感覚は誰にでもある。Aもこれまでに何度も同じような経験をしている。これもそれだと思った。自らの思い込みだと。


 しかし,やがて視線が増えてきたような気がして,汗がにじみ出てきた。それにたいそう静かであった。虫の足音ひとつせんのはおかしい,とAは思った。


 ついにAは自分でもなにがなにやら分からない衝動に襲われ,文字通り闇雲にゴミを投げ飛ばして千切ってまた投げ飛ばし始めた。時々食器類が割れたり飲み残しの中身がパソコンにぶち撒けられた様な気がしたがもはやどうでも良かった。


 するとAはなぜか,ゴミとゴミのゴミによるトライアングルの中心に腕を突っ込んだ。するとその拍子に,上に積み重なっていたゴミが落石し,Aの腕を完全にロックしてしまった。


 ビクともしない。


 次の瞬間,小さい手がAの手に触れるのを感じた。Aは必死に抜こうとするが抜けない。いつの間にか腕をつかむ手は数え切れないほどに増えていた。


 ついに,Aは頭まで取り込まれてしまい,ピクリとも動かなくなって,やがて,完全に姿が見えなくなった。


 後日,管理人が合鍵で入ると,何もなく,ただ真っ白な部屋だけが存在していたという。

読んでくだすって,ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ