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紅/零  作者: 大夜
7/9

第五話 勇者、奏者になる? 後編

久しぶりの更新です。

えーと短いです…ごめんなさい。

まだ新しいパソコンが無くてネットカフェで書いてます。

 えらいことになったな……

 目の前で火花を散らして睨みあっている二人を見ながら俺は人事のようにコッペパンを頬張っていた。


「決戦方法は……貴方に決めていただきましょう。ま、どのような内容でも私の勝利は揺るがないのですが」

「言うじゃない?割烹着の似合うお姉さん?」


 えっと、何でこうなったんだっけ?

「何でこうなったかは「勇者、奏者になる 前編」を客観的に読めば分かるんじゃないかな?」

「なに言ってんだ?アル」

 真剣に悩んでるってのに意味分からん事をとなりで言うな。余計混乱するだろが。

「マジで分かんないの?ウェインって鈍感だな……」

 おいおい何で俺をそんな面倒臭そうな顔をして見るんだ?



「見ぃぃっつっけたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 ……なんかついさっき聞いたような声がするな、しかも大音量で。


「アル!テメェ騙しやがったな!聞き込みしたらそいつが噂の転校生らしいじゃねぇか!!」


 隣に立つアルを見てみると口と腹を押さえていた、口元にクリームがついていることからきっとあのエクレアを食べたのだろう……ってまさか……


「すまん、俺は雉を撃ってくる」


 そう言うと同時にトイレに駆け込んで行った。逃げる口実を得るために自分から食ったのか…なんて恐ろしい奴だ。


 ってこれじゃ四面楚歌じゃねぇか。

 ミナとトルテはどんどん話を進めてるし、面倒臭い騒音男は現れるし、アルは逃げるし、俺に味方はいないのか?


 ……いないな。

 俺にあるのは悲しい現実だった。


「あれ、何か騒がしいと思ったら、居たの?シオルギ、ウェインになんか用なの?」

 ずっとトルテを意識していたのかやや遅れてシオルギが来たことに気付いたミナが兄を冷めた目で見る。

「ミナか、俺はコイツに是非コーラスに入ってもらおうとアプローチするんだから邪魔すんなよ」


 自信満々にそんなことを断言して、その直後トルテの見事なサマーソルトキックを顎に受けて吹っ飛んでいった。なかなか痛そうだ。


「邪魔者は引っ込んでいてください」


 トルテは蹴った体勢から立ち上がると無表情でそう言った。全然容赦ねえな、てか何でそんなカッコいい技が使えるんだ?


「とある書物に触発されまして、練習しました」


 さいですか…もう心を読まれることに対して突っ込む気にもならない。


「中々ね、お姉さん。あの粘着兄貴は気を失わない限り騒ぎ続けるから…一瞬で静かにしてくれて助かるわ」


 実の妹にまるで心配されないとは…よほど普段から仲が悪いのだろうか?まぁあれだけ騒がしくて俺に面倒事を押し付けてくるのだからまるで哀れに思わないが。


「それで、勝負の内容は?」


 そういえば最大の面倒はこの二人だった。



「そうね、なら……音楽で勝負よ!」



 …これ以上話が進むと取り返しがつかなくなりそうなのでいい加減止めるか。


「おい、二人共」




「「ウェイン(様)は黙ってなさい(ください)!!」」




「………ざけんなっ!!」



 一瞬二人のあまりの剣幕に黙るとこだったか、あまりの理不尽さに俺はキレた。

 そして二人は……まるで聞いてなかった。




「音楽ですか……いいでしょう、勝算があるようですがどのような事をしても貴方では私に勝つ確立はゼロです」


「言うじゃない、後でその発言を悔いて恥ずかしさに悶えるといいわ」



 駄目だ、ほっとこう。

 そうだ、別にこの二人が騒いだって俺に実害は無いじゃないか、トルテが勝ったら…黙らせればいいし、ミナが勝っても何かをやらされる訳でも無さそうだ。

 さて教室で残ったあんぱんでも食うか……。



「「何処へ行くの(です)?」」



 左肩をトルテ、右肩をミナに掴まれた、進むことも振り返ることも出来ない。

 どうしろってんだよ。


「教室」


 仕方なく行き先を短く伝える。だが両肩に掛かる力はまるで弱まらない、むしろ強くなる。


「ふざけた事を言わないでください」


「ウェインが行ったら誰が審判役をするの?」



「俺がやるのかよっ!?」



 びっくりしたわ!!何で俺に任せるんだよ!というかその前に俺に拒否権とかは無いのかよ!!


「ありません、皆無です」


「ウェインはこんな女のモノになりたいの?」


「ちょっと待て、色々待て、二人共なにを言ってるんだ?」


 俺は混乱する頭を抑えて二人を見る、どっちも凄く怒ったような顔で俺を睨みつける。

 なんでこうなった…いや、現実から逃げるのもそろそろ限界か……どうやらこの二人に俺の理屈は、いや世間一般的な常識は通用しないみたいだ。なら大人しく付き合う事が一番楽な選択だろう。


「分かった、審判役をするから、早くやってくれ」


 二人は俺の言葉に納得したのか再度睨みあう。


「お姉さんが先行でいいですよ、私はその間に準備してくるので」


「そうですか…ならお言葉に甘えさせていただきましょう、ですが私にも準備があります。そして……」



 

 チーラーロー、オールーロー、タールーラー♪




「予鈴が鳴ってしまいました、ウェイン様、速やかに教室にお戻りください。そこの小娘、授業終了の十分後にまたこの場で会いましょう」


 トルテは素早くパンを片付けて俺達に背を向けて行った。

 一体何だったんだ?ついさっきまであんなに睨みあっていたのに、随分とあっさり去って行きやがった。


「ウェイン、行こ、授業に遅れるよ」


 そんなボヘッとしていた俺の腕をミナが掴み、走り出す。その時のミナの横顔は今朝初めて見た時と変わらない表情だった。


 まるでさっきまでの事が夢であったかのように。



 もちろん夢なんかじゃないんだが。



 その後、教室に滑り込みセーフで入室した俺達はこれといった問題も無く授業を受けた。何故かアルの席が空いていたがそれは些細な問題だろう。


 そして午後の最後の授業が終わった瞬間にミナは立ち上がり、凄い勢いで教室を出て行った。例の準備をしに行ったのだろう。

 さて、俺も行くか…気は進まないが……いや、真剣にやっている彼女達に対してこんな気持ちじゃさすがに悪いな、せめてどんな事をしてくれるのか楽しませてもらうとするか。

 普段一緒に生活しているトルテが一体どんな音楽を聞かせてくれるのか興味はある、そしてまだミナがどんなサークルに属しているのかは知らない。うん、こう考えればなかなか楽しめそうだ。後ろ向きな考え方はやめよう。

 そして公平なジャッジをすればいい。トルテが勝っても俺はミナと普通に接するつもりだし、ミナが勝ったら……あれ?ミナが勝てば何も問題無いんじゃね?ミナは確かどのサークルにも俺を渡さないって言ってたような……



 ~勇者思考中~



「そうか!!」


 分かったぞ!ミナはトルテが他のサークルのメンバーだと勘違いしていて、トルテが俺を勧誘しようとしてると思ったんだ。つまりトルテが俺をかけてって言った時にミナはトルテのいるサークルに俺が無理やり入会させられると思ってあの提案を受けたのか…。

 二人の目的は食い違ってたんだな……なんて不毛な争いなんだ。俺はどのサークルにも入る気は無いのに。トルテの目的はただ俺が一緒に居れないことに不満があるんだろう(自分で考えて恥ずかしい事だが)、そしてミナの目的はこれで間違いないと思う。よし、トルテには今後二人で会う時間を確保することと、ミナにはどのサークルにも入る気は無いことをちゃんと説明すればあの二人が争う必要は無い!……はず。



 拳を固め、俺は決戦の地(中庭)へと向かう。

 無用な争いを終わらせるために。

 そして何より話を進めるために。


そしてなんだかんだで後編で終われない。

次回に引っ張ります。

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