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紅/零  作者: 大夜
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第五話 勇者、奏者になる? 前編

「な、なんだ……目の前に大量の梅干が!?……ここは、天国か?」




「……イン!……きて!!…ウェイン……」

 うるせぇ、今から腹いっぱい梅干食うんだから邪魔すんなよ。

「まだ、食ってない……」


「典型的な寝言っぽいけど意味は真逆だね、いい加減起きなよウェイン、ホントにご飯食べれなくなるよ?」


「あ?」


 目を開けたらそこに梅干は無く、代わりにアルが立っていた。



「お前ェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」



 ざっけんなよ!!俺の梅干どこにやったんだ!この○×△◇♯%め!!※少々汚い言葉なので伏せさせていただきました。


「大分寝ぼけてるね、今はもうお昼だよ」


 そんな俺に対してアルは呆れたように目を伏せて疲れたように言う。

 昼?寝ぼける?

 三秒ほど考えてやっと現状を把握した。


「あぁなるほどな……悪ぃなアル、いきなり怒鳴って」


 そうか、今は学校にいるんだったな…てかいつの間に寝てたんだろう?

「なぁアル、俺って何時から寝てた?」

「四限目が始まる頃かな、何度もミナが起こしてたんだけど全然起きないからさ、心配したんだよ」

「そうか……いや悪かったな、心配させて、眠かった覚えはないんだが……」

「本当に覚悟した方がいいよ、なんたってウェインが寝てた教科が結構嫌な先生でさ、寝てたら絶対に起こさずに減点をするから……」

 うわ、最悪だ…いきなり減点くらったのか、俺は。せっかく遅刻はまぬがれたのに。

「あぁしまったな、…とりあえず飯食いにいかねーと…食堂か?」

 クラスにパンをかじっている生徒が数名いるだけで、周りに人気は少ない。

「いや購買だよ、あいつらはもう買って戻ってきた奴らだよ」

「それって混むのか?」

「最初は混んでるけど、今は空いてきてるんじゃないかな?ただ売り切れとか多いから品数にはあまり期待できないね」

「む、悪いな、俺を起こすためにわざわざ出遅れちまって」

「別にいいよ、ただ今度はウェインが小悪魔トルテを食う番だ」

 ……まだ根に持っていたのか、気の小さいやつめ。

「そうかい……」

 だりぃな。

 ゆっくりと席を立ち教室を出ようとすると



「最高の音楽センスを持った転校生がいるクラスってのはここかぁ!!!」




 やたら騒がしい真っ赤な髪で野性的な顔をした男子生徒がいきなり教室に入ってきた。何だこの男?

「違いますよ~」

 それをアルが軽くあしらう、知り合いか?


「そうか、じゃあどこにいるんだ?今朝、HRですごいアカペラ披露した奴は!?」


 何だ…俺のことか、どこで最高の音楽センス云々という尾ひれがついたんだ?にしても何か嫌な予感がする。


「アカペラ?何のことでしょう?転校生なら分かりますが、もう購買に行きましたよ、シオルギ先輩」


 ほう、やっぱりアルとこのシオルギって奴は知り合いなのか、そして先輩ってことは境校(きょうこう)校舎からわざわざ未門(ここ)校舎まできたのか、懐にはちゃっかりパンが入ってると思わしき紙袋を抱えているが。

 そしてどうやらアルは俺とこのシオルギという男とは面識を持って欲しくないみたいだった。俺もこんな騒がしい奴と知り合いになりたくないから無難にあわせよう。


「購買か、また戻らなきゃならんのか…ありがとよアルマ、じゃまた部活でな」


 あ、走ってった。登場から退場まで騒がしい奴だな。


「なぁアル、あれは何だったんだ?知り合いだろ?」

 小さく安心したように溜息をついたアルに聞くとのんびりと答えた。

「うん、僕が活動してる音楽研究部の先輩でミナの兄のシオルギ・コルポートさんだよ、多分ウェインのことを勧誘しに来たんだろうね」

「あれがミナの兄貴?確かに髪の色は赤だが、他は全然似てないな」

「確かに似てないように見えるけど、根っこは一緒なんだけどね、あの二人は」

 そうなのか、ミナは陽気な奴で、さっきの奴は熱血って感じだったけどな、温かいと暑苦しいはべつもんだ。それにしても……

「音楽研究部ってどんな活動してるんだ?」

 購買がある中央校舎に向かって歩き出したアル(ダジャレになってしまった)の横に並ぶ。


「それはちょっと長くなるよ、まずこの学校には勉学にいい影響を与えることを調べるサークルが多数あってね、それは音楽だったり気温や天気、匂いに食事とかいろんな分野があって、それらによって一体どれだけ学力に影響が出るかを研究してるんだけど、音研は始めた当初こそまじめに楽器や曲にの違いで学力にどんな影響が出るかを調べてたんだけど、一度魔王に占拠されて皆の心が折れていていたときに役立ったのが音楽だったんだ……」


 そういや世界が魔王から開放されてまだ三年しかたってないんだよな、この町にはまるでそんな空気を感じないからすっかり屋敷にいるような気分だったんだが、まだ忘れられない人も大勢いるはずだ。


「続けてくれ」


「あぁ、それで去年から学校側からも音研をひいきするようになって、様々な楽器が揃ってね、今ではハイデルベルクの約40%の生徒が音研関係のサークルに入っていて、これまた様々な文化の音楽があって今では音研の内部でも五十以上に分かれて活動してるんだ。あまりに数が多く、上手いこと部費が回らなくて、それを解決するために今年には音研でどのサークルの演奏や歌に順番を残りの60%の生徒に審査してもらう大会が開催される事になってね、それで僕とシオルギ先輩はコーラスのサークルに入ってるんだけど、やっぱり優秀な人材が欲しいから、シオルギ先輩も必死なんだよ」


 コーラスか、俺って誰かと合わせて歌ったことはないんだよな、それに俺自身に歌唱力は皆無に等しい、バラードを自室で歌っていたらあのトルテに「勇者様には勇ましい歌がお似合いです」と口元を緩めながら言われた事がある。それも仕方の無い事で俺が生まれ育った村には歌なんて二、三曲しかなかったし、パーティなどに参加した時に初めて鍵盤楽器を見て、さらにそれから奏でられるメロディに感動したのはまだ三年前だ。つまり俺が音楽というものにあまり馴染みがなく、複数の人数で歌うのは興味が無い。

「音研の大会ね、どちらかというと俺は観客側だな、コーラスをやる気は無い」

 するとアルは「そっか、やっぱり」と小さく呟き、笑う。

「そう言うと思ったよ、今のコーラスの実力じゃ満足のいく資金が入る順位にはなれそうに無くてね、シオルギ先輩も焦ってるんだ、でもウェインはなんていうか歌う人じゃないんだよね、雰囲気的にさ、もっとなにかでっかくて派手なことをするような人だと思ったから」


 アル、なかなか人を見る目があるな、……トルテに惚れているところを除けば。

 そんな長話をしている間に俺たちはパンやおにぎりが売っている広間についた。さすがに歩いてきたせいか先に走って行ったシオルギの姿は無い。そしてガラリと空いていた。これなら待たずに買えそうだな。


「いらっしゃいませ」


 うん?何か聞き覚えのある声がするぞ?しかもしょっちゅう聞いている声だ。


「なににいたしますか?」


「えっと……転職したんですか?」

 アルの驚いたかのような声で質問している。

「いえ、空いた時間の有効利用でございます」

 ふぅ~お前って奴は……よくやるよ… 

「お前はどこにでも現れるな、トルテ」

 すると割烹着を着たトルテがにこりと事務的な笑顔で答える。

「私のいる場所は常に貴方様の隣ですから」

 コイツはよくこんな場所で恥ずかしい台詞を臆面も無く言えるな。しかも学校にどうやって侵入したのだろう?

「というか、どうやってここに入ってきたんだ?」

「寮の方に購買担当の方が二名程用事で来れないため人数が足らないという連絡があり、私が参らせていただきました」

 普通だった。

「なるほど、大変ですね」

 アルはトルテに意識してもらおうと積極的に前に出てパンを物色していた。


「アルマ様、こちらの新作のエクレアがおすすめです」


 するとトルテが後ろにあった籠からココアパウダーの上にホワイトチョコがトッピングされたエクレアを取り出した。


「ココアパウダーを使用した真っ黒な皮にミルクチョコを使用したチョコクリームとカスタードをあわせ、さらに酸味のきいた紫蘇クリームをあわせることで後にひかない甘さに仕上げました。表面にはホワイトチョコをコーティングしています」


 何で紫蘇を混ぜたんだよ、見てみろ、アルが額から脂汗流してんじゃねーか、もうやめてやれよそんな嫌がらせみたいなモン食わすの。


「お、おいしそうですね…一つもらいます」

 アル、お前……勇者だな、俺が認めるよ。

「ありがとうございます、ウェイン様は?」

「えーと、このコッペパンってやつとそこのあんぱんの二つで」

 俺は売れ残っていた目立たなく色彩の無い、地味なパンを選んだ。その横にお○餅パンなるものやレイ○ボーパンなどがあったが、何故かあれは食べてはいけない気がした。


「ではウェイン様、午後からもしっかり勉学に励んできてください」

「分かった、トルテも仕事、頑張れよ」

「かしこまりました、励ましの言葉、ありがとうございます」


 そしてパンを抱えて立ち去ろうとしたら……


「ヤッホー、ウェインーやっと見つけたー」

 未門校舎からミナが走ってきた。

「どうしたんだ?ミナ、そんなに急いで」

 目の前まで走ってきたミナは少し息が上がっていた。

「あのね、さっき赤い髪をした境校の生徒に会わなかった?」

「会ったぞ、どうやら俺を探しているみたいだったけど……ってなんだ?」

 いきなりミナが俺に急接近して詰め寄ってくる、一体何なんだ?

「勧誘されたの?コーラスに?」

 あぁなるほどね、ミナも音研なのか”コーラス”ではない。

 俺がコーラスに入ったかどうかが気になるってわけね。

「されてねーよ、ていうか俺が転校生だって気付いてなかったし」

 そう答えるとミナは落ち着いたのか一旦距離を置いた。いやぁビックリした。


「そこのお嬢さん、何をしておられるのですか?」


 ん?今のトルテの台詞か?、今回のアイツの出番はもう終わったんじゃなかったっけ?

「目の前でそんなイチャイチャしている所を見せられて黙って引き下がれるわけ無いでしょう?」

 あれ……トルテ、なんか怒ってる?

「離れることは仕方の無い事だと諦めました………ですが、そんな別の女が近づいているのは…耐えられません!」

 なんか目が据わってる。なんだ?こんなトルテ見たこと無い。

「あのートルテ?」





「ウェイン様をかけて決闘です!そこの小娘!!」





 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?この使用人、何か変な事言い出したーーーーーーーーー!!

 しかもご丁寧につけていた衛生用のビニール手袋(白くは無い)をはずして投げ付ける。

 当のミナは状況についていけずポカンとしていたが数秒して。





「その勝負、受けてたつわ!!どのサークルにもウェインは渡さないから!」





 ノリノリだった。ちゃっかり足元に落ちていた手袋を拾っている。

 こうして意味が分からないままに俺をかけた決闘が行われることになった。



 ホントにどういうことだよ…

後半に続きます。

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