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第3話 断魂の森

第3話です。この投稿ペースがいつまで続くのか見ものですね。

翌日から、

主人公の立場は、はっきりと変わった。

高い魔力を示した生徒たちは「勇者候補」として集められ、

王国直属の訓練施設へ移されることが決まる。

彼らには、未来と役割が与えられた。

一方で、魔力が低い生徒や有用なスキルを持たない者は、

補助要員として別枠に分けられた。

それでも彼らには「使い道」があった。

——ただ一人、主人公を除いて。

魔力ゼロという前例のない存在は、

王国にとっても、扱いに困る異物だった。

保護する理由も、訓練する意味も、

彼らには見出せなかった。

幼馴染は、補助系の適性を理由に勇者候補側へ回される。

彼女は強く反発したが、

「感情で判断するな」という言葉で押し切られた。

その結果、主人公は単独での後方任務を命じられる。

名目は「安全な物資調査」。

実態は、危険地帯の外縁部の確認作業だった。

目的地として告げられたのは、

地図の片隅に記された場所——断魂の森。

魔物の出没、魔力の異常、

そして「生きて戻った者がいない」という噂。

それでも任務は命令だった。

拒否権は、与えられていない。

数名の兵士と一人の魔導士に同行され、

主人公は森へと向かう。

途中、兵士たちの会話から、

この任務が「確認」と「処理」を兼ねたものであることを知る。

——魔力を持たない存在が、

森にどのような影響を受けるのか。

それが、彼らの本当の関心だった。

こうして主人公は、

知らぬ間に選択肢を奪われたまま、

断魂の森の入口へと連れて行かれる。

「ここから先は、確認作業だ」

魔導士はそう言って、俺の背中を軽く押した。

「確認って?」

振り返って聞いた声は、思ったよりも落ち着いていた。

自分でも驚くくらいに。

「森の反応を見るだけだ。すぐ終わる」

そう言われて、俺は数歩、前に出た。

——断魂の森。

近づくだけで、空気が変わる。

重く、冷たく、肺の奥まで染み込んでくるような感覚。

木々は異様に背が高く、

葉の隙間から差し込む光は、最初から弱々しい。

「……ここ、本当に大丈夫なんですか」

俺の問いに、兵士の一人が視線を逸らした。

「命令だ」

それだけだった。

森の中に一歩、足を踏み入れた瞬間。

――音が、消えた。

風の音も、足音も、

背後で鳴っていたはずの鎧の擦れる音すら、途切れる。

「……?」

振り返った瞬間、

視界の端で、光の膜が立ち上がった。

結界。

それが理解できたときには、

もう遅かった。

「おい……!」

俺は結界に駆け寄り、拳で叩いた。

冷たい感触が、骨に響く。

「待ってくれ! 話が違うだろ!」

向こう側で、魔導士がこちらを見ていた。

その目には、

ためらいも、罪悪感もなかった。

「魔力ゼロの存在は、貴重だ」

彼は、淡々と言った。

「この森は、魔力を持つ者ほど狂う」

「だが君は、影響を受けにくい」

「つまり——実験に最適だ」

言葉が、理解できなかった。

「……捨てる、ってことか?」

俺の声は、震えていた。

魔導士は、ほんの一瞬だけ考えるような顔をしてから、

首を横に振った。

「生きて戻れたら、評価は見直そう」

「それまでは——運命に任せる」

そう言って、彼は背を向けた。

兵士たちも、誰一人こちらを見ない。

足音が、遠ざかっていく。

結界の向こうで、

世界が、切り離されていく。

「……っ」

喉が、うまく動かなかった。

叫ぼうとしても、

声は森に吸い込まれて、消える。

やがて、結界の光すら薄れ、

俺の前には、ただ森だけが残った。

静かすぎる。

生き物の気配が、ない。

それなのに——

見られている。

四方八方から、

何かが、確実にこちらを意識している。

俺は、震える手で拳を握った。

魔力はない。

戦う力もない。

持っているのは、

【サイコロ】と【マリオネット】という、

誰も期待しなかったスキルだけ。

「……生きてやる」

それは、誰に向けた言葉でもなかった。

捨てられた場所で、

捨てられた存在が、

初めてこの世界に牙を剥く。

ここが、俺の始まりだ。

いかがだったでしょうか。

面白いと思った方はこれからも応援をよろしくお願いします。

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