若い神との交渉
私は、若い神達と囲まれて話すことになった。
「本日の議題は、原初の神が復活した。ということで」
多数決になりそうだったので私はすかさず入り込み
「まだ行動も何も言ってないのに多数決は良くないでしょう?」
ひとりは立ち上がり私を指さす
「原初の神が復活したいま、正直に言うが…均衡など保たれん」
私は今の天界はこんなにまどろっこしくなってる事に驚くと
「久しいな…原初の神よ」
振り向くと天の主がいたあの頃よりかはまるくなっているようで
「性格変わった?」
私は天の主に話しかけると彼は私の方へ歩み寄り
「沢山人間見てるうちにね。穏やかになったよ」
私は、天の主の言葉に小さく息を吐いた。
「人間を見てるうちに、か……。随分と変わったものだな」
天の主は苦笑しながら、私の隣に並ぶ。
かつては互いに睨み合い、均衡を保つために何度も衝突した仲だというのに、今はまるで旧友のように自然だ。
周囲の若い神々は、まだ硬直したままだった。
指を突きつけた神は、唇を震わせながらも言葉を続けようとするが、天の主が静かに手を上げて制した。
「落ち着け。
彼がここに立っているということは、すでに『破壊』を選んでいない証拠だ」
その一言で、議場の光の粒子がわずかに揺れた。
恐れが、好奇に変わり始めているのがわかる。
私はゆっくりと視線を巡らせた。
白銀の鎧の神、淡い翼を持つ者、炎のような髪の者……新世代の理を体現した面々。
彼らの瞳には、私の過去――洪水、混沌――が映っている。
「均衡が保てない、か」
私は静かに繰り返した。
声に力は込めていない。ただ、事実を述べるだけ。
「なら、聞かせてくれ。
お前たちが築いたこの『均衡』とは、何だ?
光の帯を幾重にも重ね、穏やかな風を吹かせ、争いを抑え込むことか?
それとも……修復者の夢を守り、世界をゆっくり癒すことか?」
若い神の一人が、喉を鳴らした。
「……それが、私たちの理です。
あなたのような原初の力が、再び暴走すれば――」
「暴走?」
私は小さく笑った。
昔なら、この言葉だけでその神を灰にしていただろう。
「私は、もう暴走しない。
少なくとも、今の私は」
天の主が、そっと私の肩に手を置いた。
その感触は、意外に温かかった。
「彼は変わった。私も変わった。
人間たちを見て、学んだんだ。
力だけでは、何も守れないことを」
議場に、静寂が広がった。
若い神たちの視線が、互いに交錯する。
恐れはまだ残っているが、そこにわずかな……希望のようなものが混じり始めていた。
私は天の主を見返した。
「それで?
お前はどうしたいんだ。
この均衡を、私にどう扱えと言う?」
天の主は、穏やかに微笑んだ。
「扱う必要はない。
ただ……見てくれ。
そして、もし必要なら、手を貸してくれ。
一緒に、この世界を――終わらせず、続けていくために」
その言葉に、私は初めて、胸の奥で何かが緩むのを感じた。
「……ふん。
随分と甘くなったな、天の主」
だが、拒絶の言葉ではなかった。
議場の光が、もう一度優しく脈打った。
それは、まるで新しい均衡の始まりを、静かに祝福しているようだった。私は、目を閉じて息を吸った。
どうも、作者の旅人です。
新作『龍と狼の事情』の投稿を開始しました。
この作品は、毎週 月曜・木曜 に更新していく予定です。
前作『いつかまた会えたならば』とは少し違う雰囲気になりますが、
楽しんでいただけたら嬉しいです。
いつも読んでくださっている皆さま、本当にありがとうございます。
これが公開される頃には、すでに第一話が投稿されているはずです。
どうぞ、ゆっくり読んでいってください。




