受け入れ
私は、やっとあの子と出会う事ができたが……修復者を選んだ事を聞かなければならない。
「やっと話する事ができたね。……どうして、ずっと避けてたの?」
さっきの脅しすぎたやり方はやめとくことにした……流石に私らしくない。
「なんだろ? いつもは追い詰める性格なのに、やっぱり色んな者達と関わって柔らかくなった?」
私は苦笑しながらもあの子に近づきながら、
「まぁ……そんなところだよ。どの道一緒になりたくても性質変わってるからね。でも君は修復者を選んだ……理由だけ聞きたい」
あの子は歩きながら私の書斎に入り、
「修復者の中に入ったのはこの世界がどうなってるか……知りたかっただけ。
貴方が眠ってる間に、どんな色になったのか……見たかったの」
私は、もう何も言わない事にした……あの頃の私ならきっとそのまま取り込み何もかも終わらせてただろう……
「そうか……ならいいよ。君が隠れてる間に私は色んなもの達に会って学んだしね」
あの子はとても意外な顔をしていた。
「暴君王だったのに、成長したね」
私はこの世界が産まれる前から暴君王だったのは予想外ではある。
「暴君王てっ……そんな我が物顔してたか?」
あの子は私の顔を捻りながらも、
「忘れててるのもまた性格ね」
そして私は天の主の元へ行く。眷属は私を見ながら、
「若い神々に……どうやって受け入れてもらえるんですかね?」
私は宇宙船の操縦席に腰を下ろし、ゆっくりと息を吐いた。
窓の外には、もう地上の風景は見えない。ただ無限に広がる漆黒と、遠くで瞬く星々の冷たい光だけ。
昔なら、この静寂すら苛立っただろう。
何もかもを自分の色に塗り潰したくて、暴君王として神々と争い暴れ回っていた頃は。
「受け入れてもらえるか……ね」
独り言のように呟く。
私は小さく笑った。
「受け入れてもらうつもりはないよ」
ただ、確かめたいことがあるだけだ。
この世界が、私が眠っていた間にどんな色を帯びたのか。
若い神々が、どんな理を掲げて秩序を築いたのか。
そして――光が修復者を選んだ先に、何を見ようとしているのか。
船体が微かに震え、超光速跳躍の準備が完了する。
視界が一瞬歪み、次の瞬間にはもう、銀河の渦も星雲も通り越して、天界の外縁が広がっていた。
そこには、かつて私が訪れた時と違っていた。
代わりに、柔らかな光の帯が幾重にも重なり、新たな神々の領域が静かに息づいている。
私は操縦桿から手を離し、立ち上がった。
「さて……挨拶の時間だ」
扉が開く音が、静寂を切り裂く。
天界の風が、かすかに私の髪を揺らした。
それは、懐かしくも、まったく知らない匂いだった。
扉が完全に開き、私は一歩、踏み出した。
天界の空気は、予想以上に柔らかかった。
かつて私が蹂躙した頃のそれは、鋭く、金属のような冷たさを持っていたのに。
今は、光の粒子が霧のように漂い、足元に触れるだけで微かな温もりが伝わってくる。
遥か前方に、最初の「迎え」が立っていた。
若い神の一柱――おそらく秩序を司る新世代の代表だろう。
白銀の鎧に身を包み、背には淡い光の翼が揺れている。
その瞳には、恐れと、好奇と、警戒が混じり合っていた。
「……原初の神よ……今更復活して何しに来たのだ……」
声は震えていたが、逃げはしなかった。
周囲の光の帯が、一瞬だけ強く脈打つ。
まるで、天界全体が息を呑んだように。
私はゆっくりと歩を進め、距離を詰めていく。
威圧するつもりはない。ただ、見つめるだけだ。
「恐れるな」
静かに言った。
自分の声が、こんなにも穏やかに響くことに、自分でも少し驚いた。
「私は、ただ……この世界が、どう変わったのかを見に来ただけだ」
若い神は唇を噛み、視線を逸らさずに私を見据えた。
「それが……本当なら」
言葉の後ろに、続きがある。
――本当なら、なぜ今、復活したのか。
――本当なら、なぜ光を、修復者を、放っておいたのか。
私は答えなかった。
代わりに、ただ小さく頷いただけだ。
すると、光の帯の奥から、もう一つの気配が近づいてきた。
今度は、もっと幼く、もっと純粋な――好奇心に満ちた神の気配。
「本当に……成長したの?」
その声は、光のものに似ていた。
いや、似せようとしているのかもしれない。
私は振り返らず、ただ前を見据えたまま、呟く。
「証明するのは、私じゃない。
この先の時間だ」
天界の風が、再び強く吹き抜けた。
それは、もう「懐かしい」だけじゃなかった。
新しい、何かが始まる予感の匂いだった。




