修復者と話す(あの子視点)
私は修復者の夢の中に入り、話しかける。
「また会ったね〜。元気にしてた?」
魔王となった修復者は、服装がその姿を形作っているせいか、ただ立っているだけで威厳があった。
夢の中だというのに、空間は水面のように揺れ、修復者の衣装は勝手に光を帯びて変化していく。
私の影が二重に揺れ、ケーキの香りだけが妙に濃い。
「あっ……あの時の少女だ……なんの用?」
警戒はされていたけれど、思い出してくれたらしい。それだけで、少し安心した。
私は微笑んで修復者の隣に座り、ケーキを切り分けながら話しかける。
「ううん。元気にしてたようで安心したわ……ケーキ、食べない?」
修復者とケーキを食べながら、私は彼に“原初”、――いや、彼の復活について伝えることにした。
「彼が復活するわ。そうすると、貴方の記憶は蘇るし……この世界について、もっと疑問を抱くようになると思うの」
修復者は困惑した表情で俯く。
その沈黙が、答えよりも多くを語っていた。
「最近……知らない人から名前を呼ばれる事が多くなってる。
君は、その声の正体が彼だと言うなら……何が起きるの?」
私は少しだけ目を閉じる。共感するように、言葉を選びながら。
「彼はね……貴方が忘れてしまった時も、ずっと探していたの。
貴方の魂は、彼と半分ずつなのよ」
だから、と私は続ける。
「若き神たちは彼の復活を恐れて貴方を狙うし、
邪な神たちは彼の力を手に入れる為に、貴方を狙う。
彼が目覚めれば……世界は、少し揺れるわ」
修復者の指が、わずかに震えた。
「知らない声に呼ばれるのが怖い……
思い出したくない記憶がある気がする……
また争いに巻き込まれるのは、嫌だ」
その恐れが、夢の空気を重くする。
私は修復者を抱き寄せ、背中を撫でた。
酷く怯えている。
以前、争いに巻き込まれ、魔王になってしまったのだから――心理的にきついのは、よく分かる。
「貴方は、ずっと一人で戦ってきたのよ。
だから……少しくらい、甘えていい」
私は静かに言葉を続ける。
「私が彼ではなく、貴方を選んだのは……こうなる事を予測していたから。
大丈夫。何があっても、私が力を貸してあげる」
貴方が私を忘れてしまった時、少しだけ胸が痛んだ。
それでも……私は、貴方の中で多くを学んできた。
修復者は、私の腕の中で、ほんの少しだけ体を預けてくる。
「そろそろ、お目覚めの時間ね。また……話しましょう」
私は修復者と別れ、眷属の待つ精霊界へ戻る。
精霊界の空気は、魔界よりも澄んでいた。
だが、眷属たちはざわめいている。
――彼の復活を、感じ取っているのだ。
「光よ……戻ってきたのですね」
眷属の視線の先。
その後ろに立つ存在を、私は見た。
「久しぶりに目を覚ましたと思えば……この有様か。
光。修復者を選んだ貴方が、何故僕を選ばなかったのか……今、聞こうじゃないか」
彼は私を見つめていた。
深淵を覗くような闇が迫る。
それでも私は、目を逸らさず――彼との対話を試みることにした。




