王の誕生(盲目視点)
私は戦場を空の上で眺めながら、戦況を確認することにした。
「やはり今回は修復者の情報戦勝ちだな」
魔界の門を管理する門番は、修復者の「負の耐性」と「情報網」を恐れ、最初に裏切った。
ほとんどの上級悪魔も、修復者の軍門に下った。
実質、堕落の王の軍勢を上回る形勢逆転だ。
修復者は相手の力を奪い解析して自身に組み込むが、条件付きで返している。敵対してこなければ攻撃しないスタンスを貫いていたため、悪魔たちは「こいつの配下になれば安全」と判断した。
「さてと、我が主に報告せねばな。最終的には主が締めないと彼らのプライドがあるからな」
私は天界に白い鳥を飛ばす。この手紙が届いたら炎の天使が来るだろう……。
堕落の王は修復者の元に辿り着いたようだが、気づかぬままに。
天界で化け物と言われた真実を原初が選んだあの子は、戦いを長引けば修復者の特性が出てくる。
狂犬と言えばよいだろう……長期戦になるほど負のエネルギーを吸収しすぎ、闘争本能が暴走し、制御が効かなくなる。
「これは私が出る幕ではないですね」
私は遠くから見守ることにした。
堕落の王は、修復者の前に立った。
黒い霧が周囲を覆い、地面が腐り、空気が震えるほどの負の気配。
飢えた獣のように吠え、数十体の上級悪魔を引き連れて迫ってくる。
「たかが人間が……王座を奪うだと?」
修復者は静かに息を整える。
敵の位置を確認しながら、ゆっくりと剣を構える。
「久しぶりだね?…転生したら必ず君は来るよね」
堕落の王は笑う。
「その力があれば、天界など塵だ」
彼の体が膨張し、黒い触手が無数に伸び、修復者を包囲する。
触手の一本が修復者の腕をかすめ、負のエネルギーが流れ込む。
普通なら魂が腐食するはずの攻撃……だが、修復者は吸収した。
体内の渦がそれを飲み込み、逆に魔力を増幅させる。
私は内心で微笑む。
お前はまだ、私の弟子を理解していない。
それが、致命傷になる。
修復者は一歩踏み出し、剣を振るう。
刃に負のエネルギーが集中し、黒い炎のように燃え上がる。
触手が斬り裂かれ、堕落の王の体に傷がつく。
彼は痛みを感じながらも、笑う。
「なぜだ?何故貴様を吸収できない……喰らえば消滅するはずなのに!」
修復者は答えない。
代わりに、修復者の特性が発動する。
長期戦になるほど負のエネルギーを吸収しすぎ、闘争本能が暴走し始める。私は一瞬、最悪の結末を想像した。
だが、修復者は踏みとどまった。
私は、修復者の理性が今にも切れそうに見えた。
でも、修復者はそれを制御する。
私の試練で叩き込まれた「耐性」が、彼を保つ。
堕落の王は空を見上げる。
そこに、私がいる。
私は静かに見つめ直し不敵な笑みを浮かべて言った。
「貴方の時代は終わったんですよ」
それと同時に修復者は剣を振り下ろす。
黒い炎が爆発し、堕落の王の体を内側から引き裂く。
王冠が剥ぎ取られ、魔界全体が震える。
彼の体が崩れ、黒い霧が散っていく。
「これで……終わった」
修復者は膝をつく。
暴走が収まり、辺りが静かに鎮まる。
堕落の王は最後に呟いた。
「人間が……我を倒すとは……」
修復者は微笑む。
「人間だからだよ……それと、あんたの息子は生きてるよ」
私は遠くから見守りながら思う。堕落の王はそれを聞きながら静かに黒いモヤとなり消えていった。
魔界の空に、新王の誕生を告げる光が広がっていく。
「おめでとうございます! 後始末しないといけませんね」
修復者は惨状を見て急いで後始末に取り掛かっていく。
城に行き、ほとんどのエネルギーを解放させて魔界の復興を始めた。
荒れ果てた大地が緑を取り戻し、崩れた城壁が再構築され、腐った空気が澄み渡る。
魔界の住民たちが、初めて「希望」というものを感じ始めた。




