抗体(修復者視点)
私は夢の中にいた。そこに見たことのない人が立っていた。お医者さんかな……と思った瞬間、
夢なのに、時間がおかしい。時計の針が逆回転してるし、足音が遠くで響くのに近くで聞こえる。全体が不穏である。
「修復者お久しぶり~定期検診にきたよ~」
足に力を込めて逃げ出す。
「間に合ってます。遠慮させていただきます!」
そして研究所内の辺りを走ったり隠れたりして回避していたが、
空間が歪む。廊下の端が無限に伸び、ドアを開けると同じ部屋に戻る。
「困りますよ……こうなったら出てきなさい」
なんか不気味な毛むくじゃらが群れをなしてやってきた。
黒い毛玉のような影が、無数に蠢き、這い寄ってくる。
修復者である私は、その正体を直感で理解した。あれは負のエネルギーそのもの……心の闇を具現化した、トラウマが形になったものだ。
「気持ちわる」
捕まったらあいつに何をされるか分からない……必死に逃げたが、
「そこのお姉さん、遊ばない」
なんかきた……でも体が動かない。その子に導かれるように歩き出した。
その子は幼い少女の姿で、夢の中で強制的に意識を操る力を持っていた。声が頭の奥に直接響き、逆らえなかった。私の心の隙に入り込み、行動を支配する。
「アイス食べよーあれかって!」
知らない人におねだりとはなかなかやるな……と思いつつ、その子と一緒にアイスを食べた時に意識を失った。
甘い冷たさが喉を通った瞬間、視界が暗転し、体が重くなった。
そして気づけば研究所のベッドに戻っていた。
横たわっている自分を上から見下ろすような感覚が残り、
「夢の検診」が終わったことを、体の震えで実感した。
「助かりました……というか現場に追い出されたんですか?」
その子ははしゃぎながら、
「眷属が修復者が寂しがってたよーって言われてきた」
私は研究室から出てくると、急いで体を確認する辺りで目を覚ました。
「なんだったのあの夢は……」
心臓は動悸が酷く、冷や汗が流れていく。
盲目は何かに気づいたのか、頭の上で赤い蛇の姿でとぐろを巻きながら言った。
「負の耐性高まりましたね……多分ですが、殆どの闇に関する攻撃を無効化又は吸収することができるでしょうね」
お陰様で……ある程度の魔界の軍隊を壊滅させた。
盲目の指導で、眷属が飲んだ猛毒(呪いや負のエネルギーを含む)を注射され、抗体を得た結果だ。
その耐性のおかげで、魔界から送り込まれた上級悪魔の群れを、
数十体規模の軍勢を一瞬で吸収・無力化して壊滅させた。
触れた瞬間、闇が霧のように吸い込まれ、悪魔たちの体が内側から崩れ落ち、黒い煙となって消えた。
せっかく手に入れた力を解析しながら悪魔たちに返していく事にした。




