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いつかまた会えたならば  作者: 旅人


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罪と信用

宇宙船の奥に、私は書斎を作った。

静かで、暗くて、時間が止まったような部屋。

そこに、分体を置いていく。

五十以上。欠片の影たち。魂のない鏡。

もう一つの影は、眷属の遊び相手。

焼け跡の魂の子に、優しい顔を貸す。

草むらを走らせ、空を飛ばせば、

「……母、見て!」

笑いが響く。影も笑う。

私は遠くから見つめ、温もりが灯る——棘のように刺さる。

(抜け殻の鏡。失ったものを映すだけの刃だ。)

通信が鳴る。

古きものたちの誘い。

『秩序を作った、古き友よ。連合を。お前が必要だ。戦争は終わった。』

ため息。またか。

座標へ。光の船が迎え、歓声が波打つ。偽り。

円卓に、古きものと新神々。

議題: 「地球は誰のものか」。

座る。手伝った「友」のはずが、目は合わない。

テーブルに影なし。熱なし。

(非在の怪物。利用の幽霊。)

押しつけの仕事を待つ。帰る場所などない。

通信割り込み。

影の種族——原初の隣人。

「地球は我々のもの。神々、人間、出て行け。」

古きものが激昂。

「邪悪め!秩序の敵!穢したのはお前たちだ!」

宣戦。戦争の匂いが満ちる。

——幻の棘が刺さる。

草原。あの子と影の者が手を握り、

「争いはない。理の一部。」

今、それが烙印を押されようとしている。

立ち上がる。踵を返し、去る。

背後で、古きものたちが人間に囁く。

「見ろ、あれが悪の元凶。俺たちと戦え、救われる。」

人間は寄る。

私は触れず、去る。

(信じろ。影は穢さない。あの子と同じ、在るだけ。)

言わない。掟の刃。信仰を生めば、信者の死を見届ける罰。

届かない言葉を、届かせない棘に変える。

影の種族よ。お前たちが、私の鏡だ。真実を、血で刻め。

宇宙船に戻る。影の分体たちが、五十以上の目で私を見る。

沈黙の合唱。

机に座り、記録。

【地球暦〇〇〇〇年】

・影、主権主張

・古き、「邪悪」の烙印、再戦争

・人間、神々の側

・私は、見送る棘

ペンを置く。静寂。

窓辺で、眷属が地球を見下ろす。震える鏡。

近づき、声。

「どうした。何もできない。私には——」

眷属が振り向く。瞳に焼け野原、血、叫び。

「……じゃあ、私が行く。」

覚悟の炎。

優しい影の分体を掴み、抱く。

輪廻の扉。白い渦。

私は入れない。理の外の罰。記憶の棘を抱え、外を彷徨う。

代わりに、眷属が飛び込む。影を抱き、光に溶ける背中を、見送る。

——失う刃。

掟の炎。信者を増やさず、名前を呼ばず、欠片を待つ。

影の草原が血に染まるのを、外から見つめる。

眷属よ。お前が、私の棘を運べ。

真実を、輪廻の血で刻め。

たとえ、届かなくても——届かせなくても。

私は見送った。

眷属の背中が、白い渦に溶けるのを。

宇宙船の冷たい床に、座り込む。

静寂が、重くのしかかる。

書斎はもう、手狭だ。

分体の影が増え、記録の山が積もり、

人間たちの魂の欠片が、溢れんばかり。

ため息。

もう、一人で抱えきれない。

通信を開く。

輝く者たちへ。

彼らの主——光の剣を振るうリーダー——に、手紙を託す。

『書斎が狭い。大きな作業場を、作ってくれ。

人間の記録が収まらない。魂の鏡を、増やさねば。』

手紙は、闇の粒子に変え、送る。

理の外から届く言葉。

届くはずがないのに。

輝く者が、飛んでくる。

光の翼が、宇宙船の窓を照らす。

いつも感じる、あの子のようなエネルギー。

純粋で、揺るぎない輝き。

でも、私は聞かない。

聞かされたことがない。

あの子の欠片を、尋ねる言葉を。

輝く者が、扉を叩く。

「原初の母よ。手紙、受け取った。」

私は頷く。

姿を現す。仮初の母の形。

黒い髪、震える手。

「作業場を。

人間たちの記録が増えすぎた。

魂の鏡を、もっと作らねば。」

輝く者は、静かに首を振る。

「主が、用意する。だが……なぜ、今?」

私は目を伏せる。

眷属の決意を、思い出す。

「影の種族の戦争が、再び。

人間はまた、神々の側に寄る。

記録が、溢れる。

お前たちも、知っているはずだ。」

輝く者は、翼を震わせる。

「あの子のような……光が、私たちにも宿る。

だが、聞かされぬ過去を、なぜ今、持ち出す?」

私は笑う。

冷たい、棘のような笑み。

「過去じゃない。今だ。

古きものとの約束で、私はシステムを作った。

人間がお金という概念を生み、奪い合いを始めたから。」

輝く者の瞳が、揺れる。

「金……? それが、何だ。」

私は、書斎の記録を広げる。

影の分体が、静かに並ぶ。

五十以上の目が、私を映す。

「人間は、争いを避けようと工夫した。

だが、奪い合いが殺し合いに変わった。

だから、私は作った。

罪と信用のシステム。

これが、彼らの『お金』だ。」

記録のページを、めくる。

人間の魂の鏡が、次々と浮かぶ。

「罪を犯せば、信用が削られる。

盗めば、嘘をつけば、殺せば——鎖が重くなる。

信用が少ない者は、悪い人生を歩む。

飢え、孤独、闇に沈む。

多ければ、良い人生。光が寄り、富が集まる。」

輝く者は、息を飲む。

「それが……輪廻の鏡か。」

私は頷く。

「そうだ。だが、鏡は自ら選ぶ。

人間は信用を積み、失い、繰り返す。

お金は鎖。罪の重さを量る秤。

信用があれば、金じゃなくても糧が集まる。

近所の果実を分け合い、旅人が手を貸す——自然の協力が、寄り添う。

信用が光なら、周りが支え、孤独を溶かす。

でも、鎖は両面だ。

光を失えば、闇だけが残る。」

輝く者は、静かに目を閉じる。

「あの子のような光が、私たちに宿るのは……そのためか。」

私は、答えぬ。

聞かぬ。

あの子の欠片を、尋ねぬ。

輝く者が、去る。

光の翼が、遠ざかる。

作業場の約束を、胸に。

書斎に戻る。

分体の影が、五十以上の目で私を見る。

記録の山が、増える。

人間の鎖が、響く。

罪の秤が、揺れる。

私は、ペンを取る。

また、書き続ける。

届かない真実を。

届かせない棘を。

眷属よ。

お前が運ぶ、真実の鎖を。

輪廻の血で、刻め。

作者の旅人です

これの続きを夜に投稿予定です。はやく出来たら夕方くらいかな

ここまで読んでる方には感謝です

もしよろしければ評価等をしていただければとても励みになります。

活動報告書書いてますので、作者のテンションがめっちゃ上がってる状態で書くつもりでおります

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