迷い(修復者視点)
俺は、苛立ちのままに宿から飛び出した。
「イライラする……何もかも壊したい」
俺が何か壊そうと探していると、
「そこで何をしてますか? その苛立ちは芸術で表しませんか?」
俺は振り返ると、あの時にあった四人の天使の一人だった。
土のような重厚な気配、穏やかで深い目の地の天使。
「芸術? そんなものでこの気持ちが抑えられるのか?」
俺は地の天使に聞いた。
「心が安らぎます……まずは私と共に人間界に行き、風景を見ていきましょう」
そして俺は彼と共に人間界に降りて風景を見ていた。
夕暮れの空が赤く染まり、星空が無数に輝く。
森の木々が風に揺れ、川の流れが静かに歌う。
見る前はあまり気にしてなかったが、地の天使から出る話を聞きながら、この風景の織り成す美しさに見とれていた。
「では戻りましょうか」
天界に戻ると、地の天使が住む屋敷に入ると筆を渡されると、
「では絵の具を作りましょう。まずはこの土と石を細かく潰しましょうか」
言われたとおりに潰したり、混ぜたりすると色鮮やかな液体が出来上がる。
赤い土の炎色、青い石の空色、緑の草の森色──自然の色が、手の中で生まれ変わる。
俺はイライラが忘れたかのように絵を描き始める。
印象に残ったあの風景を壁に描く。
苛立ちの筆使いが、荒々しく、でも次第に優しくなる。
怒りが色に変わり、壁に吸い込まれていく。
「終わった……」
そこにはまるで俺の怒りが壁に吸い込まれたかのように、美しい絵があった。
夕暮れと星空、森と川──静かに描かれている。
「完成したようですね……絵を描き終わった。貴方は、成長しました。今の貴方なら大丈夫でしょう」
地の天使は、壁を小さくして俺に渡す。
「ありがと……」
俺はその絵を持って急いで宿に戻ると、慎重に扉を開ける。
「……これは」
目の前には御馳走が立ち並び、眷属は俺を見ると抱きついてきた。
「ごめん……もう二度とあんなことはしない」
眷属は俺の言葉に驚いていた。笑顔を見せる。
「いいよ……僕も悪かったからさ。それよりご飯食べる前に水浴びしよ?」
俺は水浴びをしながら体を綺麗にすると、新しい服に着替える。
白を基調とする服で、汚れを一切受け付けない代物である。
「眷属も新しい服着てるじゃん……というかお揃い?」
眷属は微笑みながら、
「風の天使が一緒に服選んでくれたの」
俺は今回……天使たちは見捨ててないと気づくと、恥ずかしさを隠すように料理を食べる。
「ちょっと! いきなり食べないでよ!」
他愛のない話をしてふざけて、有意義な時間を過ごした。少しこの穏やかな時間の中でこのまま続いて欲しいと願った。




