修復者の苦悩(眷属視点)
僕は修復者が落ち込んでいた。あの会話が心に傷を与えてしまう。
「大丈夫?」
声をかけた。修復者は、
「いいよな……眷属はいいのにさ、俺は織天使しか見てもらえない」
僕は否定したかった。かける言葉さえも思いつかない。
「気にするな……俺には俺の道がある。眷属も己の道に行けばいい、ほっといてくれ」
修復者はベットやテーブルを壊して宿から出て行った。
その時に炎の天使がくる。
「先ほど彼が出てったのを見かけたが、この散らかりようは…どうかしたか?」
僕は悩みを言う。
「励ましたかったけど、かける言葉が見つからなくて」
炎の天使は、古い木製の盤を取り出し、ラトゥルンクリ(チェスに似た戦略ゲーム)の駒を並べ始めた。
「これをやりながら話しましょうか」
僕は説明を聞いてから駒を動かすと、
「実はかける言葉がないなら、無理して話さなくても良いのです」
僕はそれを聞きながら戦局を見て、
「でも? それだと……」
炎の天使は、駒を動かして、
「いえいえ、気にしてる事は分かります。しかし正しい言葉を使うのが大切です。
もし言葉が考えられなくても、隣にいてあげるのも良いでしょう」
僕の手番になったとき、修復者は僕が落ち込んだ時は遊びに誘っていたことを思い出すと、炎の天使はあらかじめ答えを出していた。
「気づいたようで何よりです。貴方なりの言葉で、心のままにやってみなさい」
僕は立ち上がり、外へ駆け出すと、小天使たちに食材はどこにあるかを聞き回る。
小麦粉と食材を確保したが、料理なんてしたことなかった。
「てつだいましょうか?」
小天使たちが話しかけてきた。
「うん ありがとう」
僕は小天使たちの手助けを借りながら、転生した時に見たご馳走を思い浮かべて作った。
粗い小麦粉で焼いた平たいパン──オリーブ油を塗り、ハーブを散らして。
鹿肉の燻製を薄く切り、ガルム(魚醤)のような塩辛いソースで味付けしたロースト肉。
干しブドウとフィグを蜂蜜で煮込んだ甘い果実煮。
豚やうさぎのソーセージをグリルし、胡椒やクミンで香り付け──スパイスを惜しみなく。
ワインに似た神酒で煮込んだ野菜のシチュー、チーズを削って散らしたサラダのようなもの。
テーブルに並ぶご馳走は、肉の香ばしい煙、ハーブの爽やかな匂い、蜂蜜の甘い香りが混ざり、
人間界の宴を思い起こさせる。ソーセージや干し果実、塩辛いソースの組み合わせが、
天界の清浄な空気に溶け込んで、なんだか懐かしい。
これなら、修復者を励ませるかな……ちなみに僕を含めて小天使たちも疲れていた。
「こんにちはー あらこんなに沢山作って、まさか喧嘩したの?」
風の天使が訪問してきた。
「喧嘩かどうか分からないですけど、炎の天使から助言を頂いて」
風の天使はにこやかな笑みで、
「まぁ 癒してあげましょう」
疲れが吹き飛んだ……小天使たちは残り物を持って帰っていく。
「彼は今は芸術が好きな天使が話してますから、あと少しで帰ってきますよ」
僕はそれを聞いて安堵した。
「よかった……帰ってこないのかなと心配して」
風の天使は僕を抱き寄せて頭を撫でて、
「彼は帰って来ますから、私と待ちましょうね」
僕は風の天使と共に修復者の帰りを待った。




