精霊界
私は我を忘れて長い時を過ごしてしまった。なんだここは──
精霊界と呼ばれるこの次元は、混沌の極みだった。
水の渦が空を駆け巡り、炎の鳥がそれを追いかける。
風が土を削り、土から花が爆発的に咲き乱れ、
元素が狂ったように絡み合い、空間が虹色に歪む。
遠くでは、光の精霊が蝶のように舞い、
闇の精霊が影の触手で遊び、
火の精霊が噴火のように爆ぜ、
水の精霊が滝のように流れ落ちる。
色は鮮やかすぎて目が痛い。
青い湖が空に浮かび、緑の森が逆さに生え、
黄金の光が雨のように降り注ぐ。
音は、鈴のような笑い声、雷のような咆哮、波のようなささやきが混ざり、
すべてが生きて、息をして、遊び、争っている。
私の世界のプラズマや渦とは違う、
無秩序で、でもどこか調和した狂気。
「誰ですか? ここに入った人は!」
私は、凄く小さい、虫のような飛び回るものを目で追う。
「虫と考えてませんよね バレバレですよ。」
私は呆気にとられる。
「何故、私の考えていることが分かる」
小さいものは、キラキラした翼を羽ばたかせながら、悪戯っぽく笑った。
小さな体に大きな瞳、宝石のような輝きを放つ髪。
周りの元素が彼女を中心に渦巻き、まるで彼女がこの界の中心のように。
「貴方……精霊じゃないけど概念でしょ? 自己紹介 私は妖精の女王の■◆よ」
うん……妖精の女王と名乗るだけあって、可愛らしい。でも、この笑顔、修復者を思い出すくらいの悪戯心がありそう。
「しかし、私の主と似てるね!」
私は目的を思い出す。
「あの子はここにいるのか 案内してくれ」
妖精の女王は、びっくりして目を丸くした。
「主はここにはおりませんよ……人間に生まれ変わったきり帰ってこないです。」
私は固まる。そんなことあるのか。
「私は長年……探してここにたどり着いたんだ もう疲れたよ」
私は倒れこむ。もう会えないのかと思うと、胸を締めつけた。
妖精の女王は、慌てて──でも少し楽しげに、
「冗談ですよ……ただ貴方すぐには会えませんよ」
妖精の女王が私に果物を投げてきた。
甘い香りの、輝く果実──この界でしか生えない、元素の結晶のようなもの。
「ましな冗談言えよ……流石にあれは心が立ち直れない」
妖精の女王は、笑ってる。可愛いと思ったが前言撤回だ。全然可愛くない──まだ修復者がましだ。
「案内しますが、まず精霊たちと仲良くならなければ行けません。あと各精霊たちの住処に行くには軽く三年かかります。(こちらで言う60年です)」
私は妖精の女王に聞く。
「えーとすぐには会えないのか」
妖精の女王は、当たり前の顔をして、
「私の体は疲れないので、速さを維持しながら同じ速度で三年です。すぐには会えませんよ?」
この世界で私は何年過ごすんだ。
「待て待て、じゃあ会えるのに何年かかる」
妖精の女王は、考えながら、
「20年かしら?でも休むのもありそうですし」
思考停止した……宇宙船で移動を考えると
「あの乗り物での移動は駄目です……あの方は嫌がります」
私は我慢して妖精の女王の言うとおりにする。
「じゃあさっそく! しゅっぱーつ!」
私は遠い目をしながら、
「案内よろしく頼みます」
そして広大な次元へと歩き始めた。
──この混沌の精霊界で、
50年かかったとしても




