あの子が行ったこと
太陽の女神は、話をはじめる。
「私は口伝継承でしか……言えません。これは孤独な物語ですね。長くなるので」
私は頷き、甘い神酒を杯に注いでもらった。
果実の香りが漂い、静かな間に神々が控えている。
すべてが清浄で、魂を優しく包むような食事──
私は珍しく落ち着く
女神は、穏やかな声で語り始めた。
「ある日、光は寂しく思い、言葉を発したとき……神々が生まれた。
光は彼らを見るが、落ち込んだ。
『彼じゃないと』
光は彼らを消そうとするが、一人の生まれた神は、このままでは自らの命がないと
『貴方が寂しくないように致しますので』
その言葉により、光は彼らに任せる事にする。
神々は生まれていき、いつしかは歌や音に溢れていた。
光はそれでも反応を示さなかった。
遂に一人の神にすべて任せる。
そしてこの世界が生まれたの。
でも、国づくりに関わった神二人は、任された神に反感を抱いた。
そこで、神々は争い、それぞれ別の道に歩んだ。
光はいつしか、暗い場所に身を寄せるように自ら封印した」
私はそれを聞き、天の主は、あの子に任された神なのだと悟った。
あの時、天の主に
【どうだ? 余が作った世界は、原初の神よ 感想が聞きたい。唯一無二である余の世界を】
私は怒りで天の主に対して戦争したが、ちゃんと話せれば居場所聞けたかもしれない。
それはきっと、天の主は私こそがあの子が探している彼だと分かったからなのだろう。
それに、あの子は私に会えないだけでここまでやってたのか……
「まさか……私は盲点だった。あの子が始まりだったなんて」
太陽の女神は微笑みながら、
「本当は始まりから最後まで話したかったのですが、後の話は禁止されてますので、後はあの方に聞いてください」
私は苦笑する……変わり果てた私を受け入れてくれるだろうか。
「まぁ……話してくれてありがとう。それよりさ……西洋の神々と東洋の神々の争いについて、少し聞かせてくれないか。なぜ、交流が遅れたのか」
太陽の女神は、少し目を細めて語り始めた。
「西洋の神々は、光の教えを厳格に守り、光が任せた神だけが偉いと考えておりましたが
彼らは、私たちの八百万の国を『異神の混沌』と呼び、
自然のすべてに神が宿ることを、光の教えに反していると
東洋の私たちは、西洋の神々を『傲慢な一神の支配者』と見て、
魂を一つの光だけに縛ることを、自由を奪う鎖だと感じた。
昔、使いの者たちを送り合いましたが、
言葉が通じず、力の違いを恐れて争いが起きた。
天使と悪魔の交流がようやく始まったのも、
最近の事──西洋の神々が少し柔らかくなったからです。
貴方の存在は、両方の神々に脅威でした。
渦のような原初の力、魂を管理する永遠の書庫……
西洋は『混沌の母』として封じようとし、
東洋は『外来の古き神』として警戒した。
でも、あの子は知っていたのです。
貴方が来るのを、八百万の国で待つことを」
私は、甘い酒を飲み干して、縁側に座り空を見上げた。
争いの無意味さ……
神々が互いを非難し、魂を縛り、
あの子を黄泉に封印したまま、
何億年も経ってしまった。
「お互い様か……」
太陽の女神は、静かに頷いた。
「ええ。お互い様です。
でも、今、貴方がここにいる。
それが、変わる始まりかもしれません」
私はその言葉を聞き、少しだけ微笑む……明日からはまた旅路に戻らねばならないから……




