不思議なもの(眷属視点)
羊飼いたちが来た時に、彼らの後ろに悪魔がいた……。だが、悪魔たちはあまり襲う姿は見たことがない。
「あっ! おじさん!」
僕は去年に来た羊飼いのおじさんの元へ駆け寄った。
「大きくなったな……もう大人か、早いものだ」
おじさんは、子供の頃からの知り合いで、いつも取引してくれる人だ。
「それよりさ、交易品見せて欲しいかな」
おじさんが取り出してきた中に、一つ不思議なショートソードがあった。
剣は、ただの鉄じゃない。
刃に不思議な波紋が浮かび、青みがかった銀色の輝きを放っている。
まるで空の星を溶かして鍛えたような、流れるような模様──自然の芸術品だ。
柄には古い象嵌が施され、触ると冷たいのに、どこか魂を震わせる温かさがある。
美しすぎて、戦いの道具というより、神殿の宝物のように感じる。
「これ何? 交易品?」
おじさんは驚いた顔で見た。
「これはな、希少な鉱石で作られたものでな……特別な儀式に使うものでもある。
この波紋の美しさ、まるで神の指で描いたようだろ? でも、持った者は必ず不思議なことが起きる……持ち主がいなくなってしまうことが多い」
僕が触ろうとすると、おじさんは布で覆い隠した。
狼さんは、そのショートソードの近くに行き、噛み付いたり体を擦ったりしていた。尻尾を振り、興奮した気配が伝わる。
「そうだったんですね……そういえば僕も交易品を持ってきました」
そして、作ったソーセージとクマの骨の工芸品を見せた。
「おやおや……これは品質がいい。ふむ、羊と交換しようか」
ついに念願の羊を手に入れた。羊は余すことなく使えるから、とても良い。
「この武器欲しい!」
狼さんは、ショートソードにベッタリくっついている。僕は心の中で、
『ダメだよ……その剣持つと良くないって』
狼さんは大きくなり、威圧する。
「買え!」
僕は絶対に拒否する。
『嫌だ! 羊手に入れたんだから我慢して』
おじさんは僕がショートソードの方を見ていることに気づき、静かに言った。
「どうかしたか? 気になるのも仕方ない……約束してくれないか」
僕はおじさんを見る。
「はい」
おじさんはショートソードを取り出し、僕に手渡した。
剣の美しさが、手に伝わる。波紋が光を反射して、まるで生きているように揺らめく。
この芸術的な輝き──国王が喉から手が出るほど欲しがるのもわかる。
おじさんは、声を低くして続けた。
「この剣は、ただの武器じゃない。
昔から、持ち主を選ぶと言われてる。
多くの戦士や貴族が欲しがったが、皆、不思議な力に飲み込まれて消えてしまった。
国の情勢が不安定な今、国王すら喉から手が出るほど欲しがってるが……
お前なら、違うと感じた…
そして……あの目だ。お前には、普通の人間が見えないものが見えてる。
この剣の不思議な力を、正しく扱えるのは、お前みたいな純粋で強い魂の持ち主だけだと思う。
守ってくれぬか……この剣を、そしてこの乱れた世界を、少しだけ」
僕は、それを受け取り見ていた。
「きっと君ならこれを扱えると信じておる」
その言葉を言って、おじさんは去っていった。
狼さんは大喜びして、
「この剣は、とてもいい! 向こうの世界に持って帰れる」
僕は耳を疑う。
「向こうの世界? これどうやって持っていくの?」
狼さんは剣を口で持ち上げると、剣ごと体の中に溶け込むように消えた。
僕は急いで周りを見る……どこにもない。
「どうだ! これならどこにも盗まれない」
魂の奥で、剣の冷たく美しい感触と、狼の満足げな息づかいが混ざった。
僕は、とりあえず薬師の所に行って聞いてくる事にした。
──この剣、何を起こすんだろう。




