羊飼い達(眷属視点)
僕は、年に1回の羊飼いたちが来る時期を楽しみにしていた。
何故ならば、彼らは占術に詳しい人たちで、ついでに交易品の羊肉も美味しいからだ。
僕は急いで前に仕掛けた罠の場所に森へ入り込み、険しい道筋を越えながら罠を確認すると、鹿やうさぎなどが捕らえられていた。
「やった! 上手くいった!」
そう! 僕の初めての捕獲成功だったからだ。僕は喜びながら獲物を仕留めて持ち帰る準備をする。
「なんだ! 上手くいったのか?」
狼が起きたようだ。どうやら捕まえた獲物を確認していたようで、僕は狼さんに言った。
「1週間後に羊飼いが来るから、物々交換ようにね」
狼さんは意図を理解して、心の中で答えた。
「はやく解体しないとな! 1週間後に来るんだろ? 早めに燻製肉のソーセージを作れ! ハーブと野草の場所は教えるから」
僕は、狼さんの手助けで山の野草やハーブを見つけて、さっそく仕込む。父に教えてもらった通りに。
「これで多分交易品はできてるはず」
たくさん吊るされている。そう、燻製のソーセージは贅沢品の一つであり、旅をする人にとっては大切な保存食だからだ。
「こんなに沢山のソーセージか…どんくらいで羊貰えるんだ?」
狼さんも尻尾を振りながら、心の中でめっちゃ可愛い仕草をしていた。
「まだまだやる事あるよー。うさぎとかも山小屋で血抜きしてるから、それも取ってこないと」
僕は、また山に入り山小屋へ急ぐと、
突然、背後に重い息づかいが聞こえた。
「おい! クマが後ろについてきてる!」
心臓が跳ね上がる。巨大な影が木々の間から迫ってくる。茶色の毛皮、鋭い爪、血走った目──森の王だ。
僕は、父から教えてもらったクマの対処方法を実践することにした。
この時代、クマに狙われたら逃げずに誘導する。落とし穴の罠へ。
全力で走る。足元は落ち葉と泥で滑り、息が切れる。体が疲労で重く、汗が目に入る。
狼さんは霊体で僕の前を走っていた。
「右だ! 木の陰に隠れろ! 奴を罠へ誘え!」
クマの咆哮が背後で響く。地面が震える。爪が木を裂く音、息の熱気──死の匂いがする。
僕は地形を記憶で辿る。岩を飛び越え、倒木をくぐり、急斜面を滑り降りる。
「横に飛べ! 下が罠だ!」
僕は横に急いで飛び、茂みの中に入り込む。
ドン!!
巨大な衝撃音。クマが落とし穴に落ち、底の尖った木の棘に突き刺さる咆哮が森に響いた。
でも、まだ終わらない。
「まだこいつ生きてる! はやく斧で首を切り落とせ!」
狼が威嚇しながら叫ぶ。魂の奥で、生存本能の意志が熱く燃える。
僕は震える手で斧を握り、穴の縁に近づく。
クマは棘に刺されながらも暴れ、血飛沫が飛び散る。土と血と獣の臭いが鼻を突く。
一瞬、足がすくんだ。死ぬかもしれない。
でも、狼の声が背中を押す。
「やれ! お前ならできる!」
僕は飛び込み、斧を振り下ろした。
一撃。
二撃。
首が落ち、クマの体が静かになる。
血まみれの斧を握ったまま、僕は膝をついた。
「死ぬかと思った……」
狼さんは、静かに寄り添う気配を見せた。
騒ぎを聞きつけた猟師たちが来ており、
「なんと! 少年……大人の仲間入りだな」
そう……僕の家系は、一人でクマと戦うことで一人前となる。
猟師は角笛を吹き、徐々に猟師たちが集まり、今日の獲物を運ぶ。
「息子よ……無事でよかった……そしておめでとう。これからは成人だ」
そして盛大に村はお祭りとなった。
魂の奥で、狼が優しく息を吐くのがわかった。
「成長したな…」
その夜は、1人前の証として狩猟の弓と専用のナイフを貰った。




