記憶の一部(眷属視点)
僕は、薬師の家に毎日通い、人間で言う「霊能力」というものを獲得していった。
見えるようになる。感じるようになる。
でも、それはいいことばかりじゃなかった。見えるようになれば狙われやすくなり、感じるようになれば取り憑かれやすくなる。
「見える人っていいなって思ってたけど……こんなに命を削られなきゃいけないのか……」
薬師は苦笑しながら、部屋の隅にいる悪魔の方を向いた。
「この悪魔は、とても心優しいものですよ。私も最初に悪魔を見た時はとんでもなく怖かったのですが、彼から色々教えて貰いましたから」
僕は薬師の言葉を聞き、あの時現れた赤髪の悪魔を思い出す。狼と会話していた、あの穏やかな声。薬師の悪魔は
「まぁ…そもそも悪魔にも種類があるからな…俺は薬草とか医療の知識を与えられるし」
悪魔はそういうと薬師はそれに対して
「珍しいですね…あまり話してこないのによほどあの子に着いている狼らしきエネルギー体が気になるようで」
悪魔は笑いながら消えた…本当に敵なのか味方なのか分からない。薬師は
「それに、これは霊能力を持つ人しか分からない会話ですからね…あまり他言無用ですよ」
僕は頷きながら
「分かりました。では呼び出す準備をします。」
僕は、意を決して狼を呼び出した。
「もうちょい寝かせろよ……」
渋々、僕の体から純白の狼が現れる。エネルギー体のような透き通った姿で、修復者の尖った口調なのに、どこか優しい気配をまとっている。
薬師は狼を見つめ、静かに質問した。
「貴方に質問があります。よろしいですか?」
薬師は、狼を封印できるかを考えているのがわかった。部屋に術式の線が引かれ、影の気配が漂う──過去の契約の残り香か。
「それで? 俺をそんなものに拘束すると?」
薬師は何かを唱え、狼を捕縛する術を成功させた。
瞬間、僕の体が苦しくなる。縛られる感覚が魂に響き、息が詰まる。
「これで……調べられる……大丈夫か!」
だが、狼は普通に術から抜け出した。はったりじゃない、本物の力だ。
僕は、狼に聞いた。
「狼さん……どうして、そんなに僕と一緒にいるの?」
狼はため息をつきながら、優しく──でも少し苛立たしげに答えた。
「俺とお前は魂を一緒にされたんだ。だからお前が傷つくと、俺もダメージ受ける。……守るしかねえだろ」
その言葉で、記憶の片鱗が蘇った。
痛み。黒い渦と白い光が絡みつく感覚。強引に一つにされる苦しみ。
「僕は……僕は……」
頭が割れそうになる。薬師は、睡魔を起こす薬を僕にかけて、優しく言った。
「少しだけおやすみしてください……」
意識が遠のく中、狼が僕のそばに寄り添う気配を感じた。
「とりあえずてめぇは悩みすぎだが俺が近くで守ってやるから寝なよ…一睡もしてないのばればれだ」
穏やかな温かさと、尖った守護の意志が、魂の中で静かに混ざり始めていた。




