融合の果てに
私は、二人を少し休憩させてから、本題に切り出すことにした。
原初「二人一組で転生してほしいと思ってるんだけど……」
予想通り、猛反発が返ってきた。
修復者「なんでこんな奴と一緒に転生しねぇといけねぇんだよ! 俺は却下する。同じ肉体にすみたかねぇ!」
眷属も首を激しく振りながら、私の魂を軽く叩く。
眷属「原初様……僕も反対です。獣と一緒に過ごすのは地獄です」
私はため息をつき、二人を落ち着かせる。
原初「二人は性格が正反対だ。互いの弱点を補い合える。それに、足して割った方が、ちょうど落ち着くと思う」
二人はお互いを睨みつけたまま、黙り込む。
修復者「ふーん……原初様の考えはいつも当たるけどさ。どうせ俺たち、逆らえねぇしな」
相変わらずだ。可愛いと思う。特にこういう尖った子は、しつけがいがある。
原初「修復者……また反省部屋に行こうか」
私は修復者を掴み、引きずりながら反省部屋に投げ込む。
眷属は、もう何も言わなくなった。これで良しとしよう。
次に、司令官を呼ぶ。
司令官の正体は、眷属が可愛がりすぎて最初に自我を得た子。
私が一番最初に作り出した存在で、私の性質を強く受け継いでいる。だから考え方も似ている。
書庫の管理を任せているのも、そのためだ。
修復者は、司令官から派生した分体。人間で言えば、私からすれば孫に当たる。
司令官「お呼びでしょうか? 総帥様」
私は、司令官に尋ねる。
原初「聞きたいことがある。修復者は、どういう経緯で派生したんだ?」
司令官は私を見上げ、静かに答えた。
司令官「原初様が5日間いなくなった時ですね。あの時、私は絶望という感情を初めて覚えました。そこから負のエネルギーが集まり、あの子が生まれたんです。自慢の息子ですよ」
私は苦笑した。
まさか、私の不在が負の感情を生み、それが修復者になったとは。
これからは、あまり負荷をかけないようにしよう。
原初「そうか……任せるときは、仕事が楽な時期を選ぶようにする」
司令官は頭を下げて仕事に戻っていった。
反省部屋から修復者を出してやる。
反省した様子は見せないが、眷属と少し話し合っている。
しかし、進展はしない。
眷属は相手を恨まないし、傷つけることさえ難しい。
修復者はその逆——恨むのも傷つけるのも簡単だ。
もしかすると、実戦で一緒に苦しめば、お互いの弱点を補えるようになるかもしれない。
私は、転生装置の前に二人を立たせた。
原初「君たち、転生していけ」
修復者は目を剥き、眷属は青ざめる。
修復者「待てよ、本体! 冗談だろ!? こんな急に魂を一つにすんのかよ!」
眷属「原初様……お願いです。僕たち、まだ心の準備が……」
二人は後ずさろうとしたが、装置の周囲に張られたプラズマの障壁が、逃げ道を塞ぐ。
私は静かにスイッチを入れる。
装置が低く唸り、淡い光が二人を包み始めた。
修復者「くそっ……離せ! 俺はこんな奴と一つになるなんて嫌だ!」
彼は必死に抵抗し、魂の輪郭を歪めて光を弾こうとする。
だが、プラズマの流れは容赦なく修復者の負のエネルギーを引き剥がし、眷属の穏やかな光へと絡みつける。
眷属「やめて……原初様……痛い……!」
眷属の声が、初めて震えた。
普段は恨むことすら難しい彼が、魂を強引に引き寄せられる痛みに、悲鳴を上げる。
二人の魂が、装置の中心でゆっくりと近づいていく。
修復者の黒く尖った負の渦が、
眷属の柔らかな白い光を、
無理やり飲み込もうとするように絡みつく。
修復者「離れろ……お前なんかと……混ざりたくねぇ……!」
眷属「嫌だ……こんなの……僕じゃない……!」
二人の叫びが、重なり、歪み、
最後に一つの声になる直前——
融合が完了した。
装置が静かになり、
一つの魂——まだ不安定に揺らぐ、光と闇が混じった塊——が、人間界へと射出される。
私は、静かに装置を止めた。
まさか、これがとんでもない事になるとは、
この時は思わなかった。




