天文学的な確率のキーアイテム
掲載日:2025/11/10
これを落とした人は今頃自宅に侵入されるかもしれない恐怖で慄いていることだろう。
しかし、そのドアが開く確率は天文学的だ。
恐怖する必要はない。
だが人間は自分が購入した宝くじはきっと当たると思い込むように、そのドアもきっと開いてしまうと思い込む。
私は、一つの鍵を拾った。
誰もいない道の真ん中にポツンと落ちていた何の変哲もない鍵。
大きさから推察するに、人が通るドアのもの。
この世界には無数のドアがある。
そのほとんどのドアには鍵が掛かっている。
しかし、ドアの向こう側は決まっている。
誰かの私有地だ。
そこは外界と隔絶した一つの領域。
ドアの中を管理する人間の趣味趣向を反映した世界。
そんな一つの世界にたどり着くための文字通りのキーアイテム。
それが、この鍵だ。
この鍵には名前も番号も特徴もない。
考察の余地は一つもない。
しかしだからこそ、私は生涯をかけてでも、
その無限とも言える数の中の一つのドアを開けたいと望んだ。
無様に鍵穴へ何度も差し込んだりはしない。
使うのは一度だけだ。
そんなことに思いを馳せながら私は、あるドアを開けた。
この鍵こそが、このドアのキーアイテム。
「お巡りさん、そこの道にこの鍵が──」




