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レイズアップ・シンフォニー  作者: 紫電
始まりの夏
22/48

体育会系のノリ

ホームストレートを、トップの二台が絡み合うようにして通過していく。

宙に浮いたマシンを操り、前走車の陰に隠れて風を避ける。

かと思えば、フェイントをかけるように一瞬だけミラーへ映りに行くような動きを見せたり。

この二台の中では高度な心理戦が行われていた。


「玖利くんはハードブレーキングで一瞬ふらつく…低速コーナー前で並ぶのは危険だな…。」


「朔也くん、インクリップが若干甘い。もう少しで突けそうな隙なんですけどね…!!!」


現在一位を走行中は笹井高校、西条朔也。

追う紅葉高校、東玖利。


この二台のトップ争いはレースが終わるその時まで続くだろうと、その場にいた選手、観客、テレビ越しに見ていた者も誰しもが思っていた。

この時は、まだ。









「ぶちょー!!!6位以下の集団が追い付いて来てるぞっ!!!」


『当然だ…争ってれば、こちらのペースも下がる。』


くそぅ…この3位を走るドライバー、粘り強すぎる…!

まるで突破口が開ける気がしないねぇ…!!!

一時は3位~5位で集団を形成していたものの、今では最後方10番手までが数珠つなぎの状態になっている。


これじゃあ万に一つも朔也クンの援護なんてできるわけがないね…。


既にトップツーはオレたちから10秒前方にいる。

レースが開始されてからもう15周が過ぎている。


後半戦だ。


ココからは集中力、忍耐力。

つまるところ気合と根性…!!!

いつの時代も青春の象徴ってのは、体育会系のノリなのさ…!!!


おっしゃ!!!なんか気合入ってきたぞ!!!


「ぶちょー!!!もう一回!もう一回やるぞ!!!」


『そう来ると思ってたよ…!車体を真っすぐに保て!!!』


ぶちょーがすぐ後ろに付いた。

レイズアップシンフォニーが起動する。

車体がゆっくりと上昇し…それと同時に、軽い衝撃が背中から伝わる。

もう一度、仕掛けて見せる。


加速が楽になった。

窓から手を出し、ぶちょーに向かって親指を立てる。


フゥー!

凄い風圧だ。


まだ車速は200キロに満たないが、腕が持っていかれそうになった。

改めて自分が、ものすごい限界領域で戦っていることを自覚させられる。


グングンと近づいてきている集団の先頭。

アウト側から並びかける。


「ぶちょー、今だッ!!!」


前回仕掛けたときと比べて、敵車よりもオレの方が前に出ている。

現時点でのラインの優先権は、オレにある。

ならば。


「アウト側はブロックしておく!そのまま…!」


抜き去れ、ぶちょー。

あんたなら仕留められるはずだ。











『すまん、玖利。笹井の二台にポジションを奪われた。1位を目指してくれ。』


キャプテンからの無線が飛んできた。

現状3位とのギャップは12秒と少しか…。

ちょっとやそっとのトラブルじゃあ縮まりようがない差ですね。


…この試合、ぼくがどう走るかにかかってるみたいです。


ねぇ、朔也くん。

お互いにあの時よりも速くなりましたよね。

あんなに仲良く話してた、ぼくたち三人の中で。


一番初めに有名になったのは、遼さんだった。

有名になればいいってもんじゃないと思うけれど、やはりそれは一つの指標としては間違いのないものだと思います。


取り残されたぼくたちは、どうやって付いていこうか。

二番目の切符を懸けた戦いが、今です。


これからどうする?

鈴鹿で戦って、その後は?


みんなでまた、ヨーロッパで走りましょうか。

そんな想像をするのも、楽しいですよね。


地区大会の決勝です。

西東京の高校ドライバー全員の憧れの舞台に、ぼくたちは立っています。

そして、それは全国区の憧れの舞台へと続く道でもあります。


「了解しました、キャプテン!」


朔也くん。


「必ず1位を奪い取ります…!」


次の周、行くよ。

ぼくはパチパチとパッシングをし、戦いが近いことを示す。

さあ、覚悟の準備を。


お互いに、だけどね。


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― 新着の感想 ―
前を走る二人(朔也さんとキュウリくん)とは別に三位以下もちゃんとポイントがあるわけで勝つためにちょっとでも上位に入ろうとする熱い戦い!(*'ω'*) 部長を先にいかせるために彰先輩が紅葉の司令塔をブロ…
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