TOKYO R246
季節の移り変わり…というには、あまりにも一貫して暑すぎる日々が続いた。
大気の温度は高止まりを示し、それはまた、日本国民のボルテージにも通ずるところがあった。
半分、そのまた半分と、生き残った高校と、切り落とされた高校。
それは無情でもあり、有情でもあった。
勝者は兜の緒を締め直し、敗者は勝者の応援と、来年への準備。
高校スポーツの本質がそこにはあった。
『危なげは全くなし!!!若松高校が全国最速の鈴鹿を決める、15周コールドッ!!!』
『圧倒的な速さを見せました、紅葉高校一年生・東玖利。準決勝突破!!!』
一回戦 55-46
二回戦 80-21(20周コールド)
準々決勝 58-43
準決勝 68-33
『初戦で前大会準優勝の星南を撃破した笹井が、決勝進出の快挙。東京R246での、紅葉との決戦に挑みます。』
西東京/東東京大会決勝戦、使用コース
コース名:TOKYO R246
全長:5116m
コーナー数:14
東京都港区、青山。
都心の中ではひと際緑豊かなこの地にて、東京地区予選の決勝は行われる。
国道246号線、都道414号線、都道405号線を主に使用する、公道市街地コースである。
交通の要所を封鎖して行うことにはなるが、一般車は主に空を飛び行き交っているため、地上で行われる本イベントの進行および社会への影響は少ないものとなっている。
赤坂御所および明治神宮外苑をぐるりと囲んだ本コースは、800m超のストレートと長い全開区間を擁した高速サーキットである。
大会の最大と言って差し支えない特徴であるレイズアップ・シンフォニーは、ホームストレートにおいて発動するため、こうした長いストレートは各校のクルマと音の強い繋がりを必要とする。
コース名の由来は、文字通り『Route 246』から取ったものである。
ホームストレートとなっている国道246号線は、広い道幅と小規模な凹凸、そして若干曲がっている箇所が存在する。
レコードラインはそれらを直線的に結んだルートとなるものの、10台のマシンがコース上に居る状況では中々通ることは困難となるだろう。
本大会の使用マシンの、R246でのホームストレートエンドの最高速は200キロを数える。
これは鈴鹿のそれよりも高い数値を示しており、いかにこのサーキットが大規模で、ハイスピードコースとなっているかが窺える。
特にその、ホームストレート終わりの1コーナーは注意が必要である。
例年でも、対戦相手とのブレーキング勝負に夢中になりすぎてオーバーランをし、曲がり切れずにコース外側のタイヤバリアへと突っ込む選手が現れることがしばしばある。
この大会のポイント制度の特性上、リタイアのマシンが一台でも出れば勝負権を失うことが多い。
完走が最も優先されるべき事項なのである。
しかし、そのマシンを運転しているのは年端もいかない血気盛んな少年たち。
いくら決勝まで勝ち残ってきた猛者揃いとは言え、そのあたりをコントロールする能力は大人と比べてしまえば低いと言っていいだろう。
そして今日、この場に立つことを許されたのは、西東京の頂点を懸ける二校。
オレンジ色と、新緑色のマシンたちが…選手たちが相対する。
鈴鹿への切符を懸けて。
そして、それ以外にも様々な思いがあることだろう。
全ての思いをアクセルへ。
決戦の日の、太陽がもうすぐ昇る。