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夏の頂点

空を飛ぶクルマを、人類は何年夢見てきただろうか。


1950年の人間は、『2000年ごろには実現しているだろう』と考えた。

2000年の人間は、『2050年ごろには流石に…』と考えた。


だが、それが本当に現れるのには、思ったよりも長い時間を要した。

今、道路がある場所は地べただけとは限らない。

反重力やらなんやらで宙に浮いているらしいが、一般の人間でそのあたりに造詣のある者は少ない。


ところで。


クルマが生まれたときから、その歴史と共に歩んできた文化があるだろう。


人には、競争本能というものがある。

人よりも早く、速く。

それはDNAに刻まれた、生まれ持ってのものである。


モータースポーツ。


クルマが宙を舞うようになってから、それは明らかに以前よりも人々に近くなったように思う。

人が本来持つ競争本能を刺激するそれは、かつての細々とした活動内容からは考えられないほど、瞬く間にメジャースポーツの地位を築いていった。


その一翼を担ったのは、誰の目から見ても明らかだ。


全国高校自動車競技選手権大会。

通称、JHMC (Japan High School Motorsports Championship)。


鈴鹿サーキットで行われるその大会は、かつて甲子園で行われた高校野球のような盛り上がりを見せていた。

人気の理由は、数えきれないほどあるだろう。


だが、その中の一つに、『ただのレースではない』ということが挙げられる。

JHMCで使用されるマシンは、いわば旧時代のクルマ。

本来であれば、空を飛ぶことはない。


しかし、それらのマシンにはある機構が搭載されている。


音響的上昇機構、またの名を『レイズアップ・シンフォニー』。

コースに設定された各指定エリアにて入力された音色により、車体が上昇。

スピードが向上する。


その音響を出力するのは、応援席に立つ音楽隊。

電子吹奏楽部が、コースを走る若きレーサーたちの後押しをするのだ。


かつての甲子園でも、陰の主役的存在であった吹奏楽部。

それが今ではサーキット上の選手と並ぶ、無くてはならない存在へと昇華した。


今から始まるのは、全国の頂点を決める戦い。

エンジン音と、電気を糧にした楽器たちの音色。

交わることのなかった二つの振動が、同じ波長でこだまする。


聖地、鈴鹿。


全国の高校生たちの夢の舞台で、今シグナルが青に変わろうとしている。

今、決めよう。


「「どっちが一番速いのかを。」」


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