1/2
「プロローグ」
こんな未来があるだなんて、誰が想像しただろう?
夜空を見上げながら、少年は一人考える。
砕けたトラック前面の、プラスチックの破片が散乱する道路、アスファルトの上で屍のように横たわっている。
摩擦で擦り切れた制服、投げ出されたヘッドフォン。
月は何も言わず、ただ少年を見つめている。
こんな未来が待っていたなんて、誰が予想できただろう?
自分が、自分の身体が、自分の精神が、自分の人生が、全く別の誰かに作り変えられていくような感覚に、ただ背筋を強張らせた。
『ひぃ……ッ!バケモノッ……!』
鼓膜に張り付いた、声。
ロボットのようにカタカタと、それでいて鼠のように素早く逃げていくトラック。
途切れたはずの意識。
──こんなことになるなんて、誰が知っていた?
ただ、この日を境に変わった、変わってしまった何かを夜空に見出しながら、少年は…
榊原メイは、呆然としていた。