第9話 この異世界は?
「ケビン殿、俺からも質問良いか?ここは違う世界、か?ヴァルホル《ヴァルハラ》じゃない、キリスト教徒の天国でもない。昨日ここに転生したばかり、地理、全然分からない。」
ブリジットから渡された本を読みつつ現地の言葉でたどたどしく答えるフロールヴの言葉を聞いてケビンが深く頷く。
「君がいるのは我々の宗教ではエクメーネという世界だ。デウスの母神であらさられる女神デー様がこの世界を作られたと言われている。」
成程な、とフロールヴが相槌をうちケビンは話しを続ける。神様が複数いるというのは北欧の神々の宗教を信ずる自分とは相性がいいかもしれないと彼は考えた。
「そしてここはこのエクメーネ界のヘブロス大陸の西の隅の400人程の人がいるマイダという小さい島だ。この島の一角で私はこれでも農場の経営をしている。」
「昨晩の連中、何者?なぞここ、襲う?」
フロールヴの質問にケビンは頭を抱えた。ヒルダとブリジットが心配そうにケビンを見つめる。
「あれはおそらく島の有力者のだれかに雇われた外部の傭兵団だろう。私の農場経営が上手くいっているのを快く思わない者がいてね。私の農場や資産を奪い取るつもりだったのだろう。幸い君がいてくれたおかげで助かったがね。」
半分は嘘だ。とフロールヴは思った。その手の傭兵団は見た事があるし、自ら指揮した事もある。こういう時兵士は戦利品として金品や家畜を剥ぎとろうとするし、戦意を削ぐために放火をする事もある。その様な跡が今回殆ど見られなかったという事は敵の目的は別の特別な何かにあるのだ。と推測した。今はケビンとの関係を良くする方が良いだろうと考えフロールヴはケビンの話しを黙って聞いていた。
「その有力者、心あたりは?この世界の方はまだ知らない、が、今回の件、裁判ですまない筈。こちらに死人も出た。けじめを付ける為、そいつの首、差し出す必要ある。」
「まぁ差し詰めこの島の村長を務めるドゥーガルだろうな。経営が軌道に乗り出した時からあいつとは仲が悪い。」
「じゃあドューガル、殺せばこの戦、終わる?」
フロールヴの発言に苦く笑うケビンとは別に沈痛な顔で下をうつむくヒルダをこの時フロールヴは見逃さなかった。
朝メシ回終わり!
とうとうフロールヴのいる世界がわかりましたね。
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