第8話 ケビン達との朝食
「ヒルダ様から話は聞いている。君がフロールヴだな?昨日の働きには感謝する。おかげで敵を撃退できた。私はここの農場の主のケビン・キャラハンというものだ。この二人は私の妻のブリジットと娘のヒルダだ。どうぞよろしく。」
ケビンの握手にフロールヴは快く応じた。詳しい言葉までは分からないが歓迎はされているという事、この農場の主の名が通訳に応じたヒルダを通してようやく分かった。
「ケビン殿、戦いのあととはいえ、歓迎、ありがとう」
フロールヴはブリジットから渡された言葉の本をかじる程度には呼んで覚えた言葉で挨拶してみた。ケビンはうんうんと肯定的にうなずく。
「うむ。とりあえずの歓迎もしたし食事が冷める前に祈ろう。」
フロールヴはケビンの発言に少し驚いた。異世界でもキリスト教の様に食事前に祈る習慣があるのだなと関心しながら周りにならった目を瞑った。ケビンの静かな低い声が室内に響き渡る。
「神の中の王デウス様、昨日の戦いの勝利と今日の平穏をお与えくださりありがとうございます。この食事を貴方に捧げます・・・。さぁ、みんな食べよう!」
主の号令で兵士達が一斉に食べだす。昨日の戦いからなにも食べていないので兵士達はみなかっこむように食事を口の中に入れる。フロールヴも例外ではなかった。スープをそのまま一気に飲み、肉とパンは手で引きちぎる様に食べた。その様子で隣で見ていたヒルダが引き気味の目でこちらを眺めていたが気にしない。
「君はガッツリ食べるなぁ。異世界人とはいえナイフとフォークの使い方くらいはしっているだろう?」
「フランク人、ギリシャ人みたいに、綺麗じゃない。なにせ、俺ら、蛮族だから。」
ちゃんと食器を使えとケビンはいいたいのだと理解したフロールヴはそう皮肉まじりに返した。
「まぁまぁそう卑下するな。昨晩の戦いぶりから見るに君はどこかの軍か傭兵団の所属だろう?まずどこから来たんだ?」
口の中に入れたパンと肉をかみつつヒルダの通訳で得た情報を基にフロールヴは現地語で質問に答えた。
「ノルウェーという王国、そのさらに小さい王国から来た。戦い方は、そことは別の、ヨムスボルグ。」
答え終えた後、口の中で噛んでいた食べ物を飲み込んだ。そして質問をする為に閉じていた口を開いた。