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【第5章】藍の迷宮と羊の夢_004

「ここだ」

「ここかぁ……」


 ローラッドは少女が指差した店の外観を見て、半分ため息のような声を出した。


 まず目につくのは看板の両脇に飾られたドクロ。

 結構デカいので流石に作り物だと思いたいが、人骨を象徴としている時点でロクなものではなさそうだった。

 次に店の壁にのたくっている薄気味の悪いイバラ。

 濃い緑色で棘まみれのつるは植物かと思ったが、よく見るとそれらは魔物の触手のように脈動している。

 トドメに看板もドクロもイバラも所々『何か』で赤黒く汚れていて、明らかに近寄ってはいけないオーラを醸し出しているのだ。


「マリュースは本当にこんな店が好みなのか?」

「まえに通りかかったとき『この店センスがクソいいんだよな!店員がド陰キャで終わってるけどセンスだけはクソッタレにいい!!』ってほめてた」

「褒めてんのかそれ……?」

「うるさい。いくよにもつもち」


 有無を言わせない藍色の少女は扉を引き、躊躇なく中へと入っていった。

 流石に扉にまでイバラが這っているようなことはなかったものの、ローラッドは身体を引き裂かれないよう慎重に続く。


「い、い、いら、いらっしゃい……」


 入店した瞬間、確かにマリュースの言い分にも一理ある店員が出迎えた。

 細身かつ猫背で、苔むしたように緑がかったもっさもさの髪で目が隠れていて、ハスキーな声は男か女なのかもわからない。

 だが意外なのは彼(あるいは彼女)の見てくれだけではなかった。

 天井には相変わらずイバラが這っているものの、整頓された壁や棚に服、アクセサリー等々が整然と並べられており、空いた部分には小さな観葉植物らしき鉢植えも置いてある。

 表に出ているようなドクロの装飾もあるにはあるが、所々にワンポイントずつだ。


「なんか、思っていたのと違うな」

「ひっ、お気、お気に召しませんですか……?」

「あ、いや表の様子からして中もドクロと血にまみれているのかと」

「そんなわけないでしょ、『悪魔』じゃないんだから」


 ギロ、と藍色の少女は羊角の少年を睨んだ。


「おみせのひとをおどかしてどうするの。わたしたちはこれからプレゼントをえらぶのに」

「俺は脅かしてなんか……」

「だだ、大丈夫です!じ、じ、自分はいつも、このような感じですので……いやもうほんとうにもうしわけないご迷惑ばかりおかけしてせっかくこんな店に来てくださっているのに……」


 小声ながら後半はまくし立てるように弁明する店員にローラッドは何と返事をしたものか迷い、しかし何を言っても動揺させてしまいそうだったので沈黙を選んだ。


 その代わりに、というわけでもないが、軽く店内を物色してみて分かったのは妙な服ばかり売っているということ。

 展示用の木製人形に着せられている服は明らかにオーバーサイズであり、袖や裾に布が余りまくっている。

 そのうえ全体的に色は暗く、かと思えば一か所ド派手な色で染色されていたり。

 アクセサリーとして並べられているのも用途不明の鎖やこれまた小さなドクロのピアス、指輪……見方によっては呪術道具に見えなくもない。


 ただし、ひとつ言えるのは確かにマリュースが着てるのもこんな感じだったということ。

 奴はそもそも身体も大きいので、このくらいで丁度良い、ということなのだろうか。


「ファレニア、さっそくで悪いが俺はこんな服を着たことがないからアドバイスはできそうにない」

「もとからきたいしてない。でもきせかえのお人形にはなるでしょ、えらんでくるから待ってて」


 そう冷たく言うと、ファレニアは店のどこかへと消えた。

 狭い店内だが藍色の少女が小柄なのもあって、一瞬で姿が見えなくなってしまう。


(人形と言っても体格が違いすぎて参考にはならないと思うが)

「あ、あ、あ、あの……」


 ローラッドがそんなことを思いながら手持ち無沙汰に立っていると、もさもさの店員が話しかけてきた。


「あな、あなたローラッドさん、ですよね……?」

「ん?俺のこと知ってんの」

「え、ええ。けっこう有名ですよ。で、でも今日は、あのお嬢様とは一緒にいないんですね……あの人きらきらしてて凄く眩しいですよね物理的にも……えへへ……」


 奇妙な笑顔の店員が言っているお嬢様とはまず間違いなくエルミーナのこと。

 共に行動し始めてからまだ1か月も経っていないが、流石にセットで認識され始めているようだ。


(あいつもうまくやっていると良いけど)


 羊角の少年は別行動中の黄金令嬢に思いを馳せる


 彼女は今、協力してくれるほかのダンジョンの主を回り『策』の共有とその準備をしている頃だ。

 腕をケガしているキスティが離脱しひとりになるのは大丈夫か、と聞いたら「ベロスちゃんが居るし心配無用ですわ!」と自信満々に言い放ち、そのままケルベロスの子犬を連れて旅立つ彼女を見送ったのは今朝だというのに妙に懐かしく感じる。

 やはり浴びる光量が落ちたからだろうか。


「まあ眩しいやつだよな……太陽が傍にいるっつーか」

「たた、たた太陽……!?ま、眩しいッ……他人を太陽だと恥ずかしげもなく言える属性が眩しすぎる……こ、こ、これが本物……勝手に遠くから見て同類感を覚えていた自分が恥ずかしい穴があったら入りたい、まあ元々穴の中にいるような陰キャですけど、えへへ……」

「……」


 この店員、やりづらい。

 ローラッドは早くもファレニアが戻ってくるのが待ち遠しくなっていた。

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