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【第4章】娯楽と交渉は紙一重_018

 両腕を失い、それでも立ち上がったゴーレムは少し震えていた。

 身体中からぎし、ぎしと今にも崩れ落ちそうな金属音が響いていて、とても近づきたいとは思えない。


「コアはおへその辺りにあるアレですわよね……どうにか破壊しないといけないのでしょうけど」


 黄金の令嬢は顎に手を当て、ふぅ、とため息をつく。


「ぶっちゃけ、どうするつもりですの?ローラッド。右腕はエメラルド色の円盤で吹っ飛ばし、左腕はキスティが斬り飛ばしてくれました。けど、胴体となるとゴーレムがちょうど円盤の上に転んだりしない限り起爆するのも至難ですし……」

「言っておきますけど、もう一回斬るのはムリですよ」


 やや食い気味に、白金色の少女は右肩を抑えながら主張する。


「さっきも言いましたけど、誰かさんの『おまじない』のせいで、あるいはおかげで、痛みはあんまりないですけどもうわたしの右肩はダメです。そしてわたしは利き手じゃないほうで正確に斬れるほどの達人でもないですし、何より両腕とも使えなくなるのはイヤです」

「そうキッパリ言わなくても大丈夫だよキスティ。俺にだってそれなりの無茶をさせた自覚はある」

「と、とか言ってすぐ『おまじない』をかけてきますからね。男はこれだから汚らわしい……」


 キスティはささっ、とエルミーナの背に隠れながら言った。

 突き刺すような目線が非常に痛い。


「まあまあキスティ、ローラッドもあなたを苦しめようとしたわけではないのだし、許してあげてくださいまし」

「……」

「レズ女にすっかり嫌われたな、ご主人」

「なんでお前は嬉しそうなんだブラッディ……」


 桃色の使い魔がケケケと笑うと、ローラッドの右薬指にハマった『指輪』も手袋の下で同期してカタカタ揺れた。


(同じ『魔界』由来同士、共鳴するトコがあるのか?)


 いつかは向き合わなくてはならない『指輪』の問題も気になるが、ひとまずは目の前のゴーレムだ。

 ローラッドはぎしぎし揺れたまま動かないゴーレムを再度見上げる。


「あのゴーレム、急に大人しくなったのが不気味だな」

「……もしかしたら『考え事』をしているのかもしれませんわね」

「考え事?」


 ローラッドがオウム返しで問い返すと、エルミーナは「なんと言いますか……」と少し考えて、何か納得したのかポン、と手を叩いた。


「そう、『学習』ですわ!あのゴーレム、わたくしたちの戦術を学んで、同じ轍を踏まないように行動する機能がありますわよね」

「あ、ああ。少なくともそう見える」

「ですから、二カ所も弱点を潰されて、どうしようかな~って考えている最中なんですのよきっと。いまこうしてわたくしたちが作戦を話し合っているのと同じですが、むこうはひとり(?)でこっちは4人!依然有利ですわね!」

「そういうもんなのかな……?」

「……あっそうだ!!!」

「うお眩しいっ」


 何か天啓的に思いつく際に『いなづまが走る』といった慣用句的表現で例えることがあるが、この黄金令嬢の場合、本当に稲光のような光を発するらしい。


「ローラッド!あなたの『未解明(アンノウン)』のプライマルの出番ですわ!」

「……え?」


 そしてその意外過ぎる発言に、ローラッドはアホ丸出しの疑問を発声する。


「だから、あなたのその魔族の力?の出番ですの」

「いやあのな……自分で言うのも悲しいが、俺の力は知性が一定以上ある生物にしか効果はないと思うぞ。あんな自動で動いているようなゴーレムには」

「知性ならありますわ!」


 ビシィ!と黄金令嬢が指差す先にはぷるぷる震えている金属の巨体。


「あんなに思い悩んでいますもの。『悩みこそ思考であり、思考こそ前進である』とはアルゴノート家の家訓で……」

「つまり、ゴーレムに『学習』機能があるなら俺の、たとえば『夢幻夜行』とかが効くんじゃないかってことか?」


 エルミーナは目を文字通りに輝かせながら自信満々にブンブンブン!と首を縦に振った。


「……ブラッディはどう思う?」

「オレ?オレに聞かれても困るぜ。ゴーレムは『魔界(あちら)』でも何体か見たけど、淫魔の連中(ごしゅじんのどうるい)は毛嫌いしてなかったか?ゴツイとかダサイとかカタイとかで。第一知性があったとして、ご主人の能力は夢を侵す力だろ?」


 ブラッディは疑いの眼差しで震えるゴーレムを見る。


「アレが夢を見るってのか?」

「うーん……」


『学習』するゴーレムは淫魔の操る夢を見るか?

 今まで一度も考えたことのない類の問いに、ローラッドは頭が痛くなってきた。


「まあ、ひとまず試してみませんか?キスティも早くちゃんと治療したいし、とにかく物事を前に進めなくては!」

「そうは言ってもだな」


 ばぎんっ!と。

 いま一番聞きたくない音がローラッドとエルミーナの会話に割り込んだ。


 ゴーレムは震えを止め、ギラリ、と光るひとつ目のような輝きが4人を見下ろしている。

 どうやら『思考』は完了したらしい。


「やるしか、ないってか……!」

「そうです、腹をくくるならいま!ですわ!!」


 フンス、と鼻息荒く、エルミーナは高らかに宣言する。


「名付けて『ゴーレムさんのわんちゃん化大作戦』、開始ですわよ!」

「『夢幻夜行』を相手を犬にする技だと勘違いしてないかお前!?」


 ともあれ、作戦開始だ。

読んでいただきありがとうございます!

遅くても3日ごとに更新予定!

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