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【第4章】娯楽と交渉は紙一重_014

 ぎゃりぎゃりぎゃり!と。

 巨大な鎧がそのまま動いているかのような金属製の人型ゴーレムが、駆動音を響かせながらその大木並みに太い腕を叩きつける。


「エルミーナッ」

「ええ、分かっていますともっ!」


 巨大な腕が叩きつけられた衝撃に足を取られそうになりながら、一撃を躱したエルミーナが黄金色に輝いた。

 キュガッ!と目も眩むような閃光、そして爆発。

 アルゴノート家令嬢の象徴ともいえる『黄金光』のプライマルがゴーレムの胴体に直撃した。

 だが。


「なっ!?」

「チッ、効いてねえか」


 ゴーレムの胴体はそれを覆う金属装甲が赤熱するのみで、黄金の光を弾いてしまったのだ。


「エルミーナ、もう一発はっ」

「流石に今の出力を連発は無理ですわ!」

「エルミーナ様、こっちに避けて!」


 ギギギッ!とイヤな金属音が鳴り響く中、焦燥のままに叫ぶ黄金令嬢の腕を引き、キスティがその場を離脱。

 直後、ゴーレムが反撃として振り下ろした腕が地面を叩いた。


「ご主人、あのゴーレムの装甲、露骨すぎねえか?」

「ああ。完全にエルミーナ対策だ」


 エルミーナたちとは反対側に避けていたローラッドは、使い魔の指摘に改めてゴーレムの胴体へ目をやる。

 金属製の装甲は既に放熱して元の色に戻っているが、その特徴的なのは薄暗いこの戦闘場に灯るわずかな松明の光を反射し、ギラギラと輝いていることだ。


「あんだけ磨かれていたら、エルミーナの『輝き』も威力半減だ。様子を見る限り、一応熱は蓄積するみたいだが……」

「おいレズ女っ!オマエ、鋼鉄とか切れたりしねえのか?」

「はぁ!?無茶言わないでくださいっ」


 一応『懲罰棒』を構えつつも、キスティは桃色の使い魔へ弱気に叫び返す。


「わたしのプライマルで『切断』できるのは刃物化した物体より柔らかいものだけ!単純な物理法則の問題です!第一、近づいて斬ろうにもリーチが違いすぎて、一歩間違ったら斬る前に踏み潰されちゃいます!」

「はぁー!使えねえな!」

「なんですって!?」

「そんなんじゃ……オイ危ないっ」

「ッ!?」


 ギギギギギギッ、と金属音を響かせ、ゴーレムは背中から何かを掴み取った。

 大きな岩のような、表面がつるりとした鈍色の塊。

 ぶつかるだけでタダでは済まなさそうなそれを、巨兵は大きく振りかぶる。


「キスティ、掴まって!」


 黄金令嬢の合図に従い、白金の従者はその腕をぎゅっと抱きしめる。

 直後、爆発。

 黄金光を足元に照射し、その爆風に乗る形でエルミーナがキスティごと離脱したのだ。

 2人が立っていた場所に突き刺さった鈍色の塊が害意たっぷりの破片をまき散らして割れる。


「きゃあああああああああっ!?」

「エルミーナッ!」

「だ、大丈夫。驚いただけですわ!」

「ご主人、こっちもだ!」


 土煙の向こうから声がしたのに安堵したのもつかの間、使い魔の警告に目線を上げれば、ゴーレムが再び背中に腕を回し、振りかぶる。


「モノまで投げてくるとか結構器用だよなマジでッ!」


 ローラッドは『感度自在』で強化した脚力を使い後ろへ跳躍、さらにそれをブラッディがキャッチし、翼も駆使して最大限の距離を取る。

 そして着弾、鈍色の塊が破裂する。


「やべーぞご主人。流石にこれは殺しに来てる」


 なんとか攻撃を回避したブラッディが汗を拭った直後、ぎゃりぎゃりぎゃりぎゃりぎゃり!と。

 咆哮の代わりなのか、言葉を持たないゴーレムは両手を広げ、金属音を響かせた。


「あいつ勝鬨(かちどき)なんかあげやがって!」


 使い魔が悪態をつく中、ローラッドは冷静にゴーレムの行動に目を光らせた。

 殺しに来てはいるが、これはあくまでもアトラクションのはず。

 つまり『攻略』できるように設計されているのだから、何かしら攻撃を通す方法を用意しているハズなのだ。

 普通の攻撃の目途が立たず、光線も対策されている中でも、何か。


「……!」


 そして気が付く。

 ゴーレムの両手のひら、そして腹の部分。

 露骨に、エメラルド色に光っている部分がある。


「みんな、手のひらと腹だ!」

「弱点ですのね!でかしましたわ、ローラッド!」


 ローラッドの意図に気が付いたエルミーナは即座に『黄金』を輝かせ、ひと筋の光線をゴーレムの腹に向かって発射する。

 黄金の光はエメラルドのコアに直撃、したがやはり赤熱させるのみで、ゴーレムはびくともしない。


「って、全然効かないじゃないですか!」

「なにか他に方法があるのか……?」

「ゴ、ローラッドさん、これって本当に『攻略』できるんです!?」

「そのはずだ!これはあくまでアトラクションで……」


 そこまで言いかけて、ローラッドは自分に宛てたジタリーの手紙のことを思い出した。

 そこに書いてあったこと。

 ローラッドしか知らない、このダンジョンにおける原則。


「ご主人、これっ」


 羊角の少年の額をイヤな汗が流れるとほぼ同時、使い魔が大声で報告する。


「アイツが投げてきて割れた弾の中に妙なモンがある!これを『攻略』に使うんじゃねえかな!」


 桃色の使い魔が手にしているのはコアと同じエメラルド色の円盤。

 両手で抱えられるほどのサイズのそれはまるで呼吸をするように明滅している。


「待てブラッディ、そいつは……!」

「とりあえず……」


 ローラッドが使い魔を止める間もなく、大きく足を上げたゴーレムが彼らを踏み潰そうとし、


「これでも、食らってみろ!」


 ブラッディがフリスビーの要領で拾った円盤を迫る足に投げつけた。

 円盤はカン、となんとも気の抜ける金属音を立ててゴーレムの脚の裏へとぶつかったが、それだけ。


「チッ、使い方を間違ったか」


 舌打ちをしたブラッディだったが、その『正しい』使い方はすぐに分かることとなった。

 彼女が飛びのいて避けた場所を、足の裏に円盤を引っかけたままのゴーレムが踏みしめた次の瞬間。


 聴覚が麻痺するほどの大轟音と共に、緑色の爆炎がゴーレムを吹っ飛ばした。


「うわあっ!?」


 あまりの爆風に、少し離れていたブラッディも吹き飛ばされて転がった。


 ゴーレム自身の攻撃で起爆する、超強力な爆弾。

 それが緑色の円盤の正体。


「なるほどっ!それを弱点に当てればいいんですのね!」


 黄金の令嬢が歓喜の声を上げるが、ローラッドはすでに焦燥感のような、もがくほど沈む、暗く粘ついた沼のような感情に溺れそうになっていた。

 起き上がりつつあるゴーレムが、では、もう一度首尾よく円盤を用意してくれたとして。


 それをゴーレムの弱点……手のひらに当てに行ったら、当てた本人はどうなる?

読んでいただきありがとうございます!

遅くても3日ごとに更新予定!

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