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【第3章】ダンジョン攻略狂騒曲_032

「なるほど、ですわね……」


 提案から数時間後。

 ローラッドの『策』を聞き、エルミーナはふぅ、と嘆息。


「現状、各方面の状況をいちばん把握しているあなたが言うのなら、その『策』を実行するしかないのでしょうけれど……仮定・憶測の部分が多すぎるわ」

「うぐ」

「少なくともニヤッと笑ってドヤ顔で語るには穴が多いですわね」

「うぐぅ……」


 そしてわりとばっさりと、ローラッドの『策』にダメ出しした。

 対する羊角の少年は、小さくうめくことしかできない。

 黄金の令嬢は「まあそう落ち込まず」とフォローを入れつつ、


「足りない部分はこれから何とかしていけばいいのです」


 と、自信ありげに断言した。


「足りない部分を何とかすると言っても、準備に使えるのは1週間。あんたの父親が俺に『答え』を聞きに来るまでだ。とにかく急がないと何もかも間に合わなくなっちまう……!」


 それとは対照的に、不安に駆られたローラッドは立ち上がり、ドアの方へと向かう。


「お待ちなさい、ローラッド」

「ぐずぐずしてなんかいられないんだ。本当は今日ももっとたくさん」

「お待ちなさいと言っているでしょう!!」

「うおっ!?」


 ズビィ!と、ローラッドの足元に照射された黄金色の光線が床を焦がす。

 流石に足を止めた少年に「お話は最後までお聞きなさい!」とエルミーナがビシッと言い放つ。


「『策』の穴の補強は成功と失敗の分水嶺となる重要な事。それをあなた、寝不足の頭でやる気ですの?」

「……でも」

「でもじゃありません!」

「ひゃいっ!」


 黄金の令嬢の一喝に、思わず背筋を伸ばすローラッド。

 彼女の言葉には、不思議と逆らえない迫力があった。


「だいたいあなた、そのまま外に出たら大変ですわよ。ご自分の恰好に自覚がないんですの?」

「あっ」


 そしてローラッドは指摘されてはじめて、自分が現在上半身裸であることを思い出した。


「まったく……判断能力の低下が著しいですわね。そろそろ寝不足であることをお認めになって?」

「……はい。私は寝不足で、いまかなり眠いです」

「よろしい。そんなあなたにプレゼントがありますのよ」


 エルミーナは満足げに言いつつ自分の衣装棚を適当に物色し、そのうちのひとつを手にしてローラッドの元へと持ってきた。


「今日はこれを着て寝なさいな」


 差し出されたのはふわふわの布。

 もとい、羊毛か何かで出来ている、女物のかわいらしいパジャマだった。


「い、要らねえよ!」

「どうして?お父様が用意したものですけど、結構着心地はいいですわよこれ」

「どうしてって……」

「寝入りが悪いならこれで少しはマシになるんじゃありません?」

「で、でもこれ入るかどうか」

「こんなのは大体全部オーバーサイズがデフォなんですのよ」

「それにしたって」

「手段は選ばない、そうでしょう?」

「うぐっ」


 自分が散々口にしてきた言葉をここぞとばかりに投げ返され、ローラッドは言葉に窮してしまった。

 そしてこういう場面では、言葉に窮した方は『敗北』となる。


 ローラッドはあれよあれよとふわもこパジャマを着せられてしまった。


「やっぱり!結構似合ってますわよ!」


 死んだ目で立つふわもこ羊少年を見て、エルミーナは歓喜の声をあげた。


「やっぱり?」

「あっ、いやその、以前からちょっと……羊さんみたいだしこういうのが合うだろうなと」

「以前って……いつからこれを」

「わ、わたくしとおそろいですし!何も問題はありませんわね!!」

「俺はあんたを信用して全部話したんだが」

「うぐっ」


 こういう場面では、言葉に窮した方が、負けだ。


「……以前、あなたの調査をしているときに、お父様に頼んで用意してもらったのです」

「調査に必要だって?」

「だ、だって!お父様の言いつけとはいえ、結婚するかもしれない相手のことはできるだけ好意的に見るべきですわ。好意的に見た結果、なんだかふわふわのパジャマを着てたらいいなーと思ったし、ちょうどよく角も生えてきたし……」

「……」


 ローラッドはこれ以上追及しても可哀そうな気がしてきたので、これ以上は追及しないが。

 顔を赤くしてしどろもどろになっているこの金ぴか女、なんだかんだで父の束縛下でもしたたかに生きる術を身につけてはいたようである。


 ふう、とため息をひとつ置きつつ。


「……これを着ていた方が幾分気分よく接することができる、っていうなら、まあ、着ておくけどさ」

「ええ。絶対にその方がいいですわ」


 しどろもどろはどこへ行ったのか、力強く断言するエルミーナにもうひとつため息を置きつつ、ローラッドは自分の部屋……正確には、隣の空き部屋に戻ろうとする。

 まだ数日しか経っていないが、なんだかんだで愛着のある、空っぽの寝床だ。


 だがその行く手にエルミーナが立ちふさがる。


「寝るまではどこへも行かせませんわよ?」

「だから寝に行くんだよ」

「ダメです。今日はここで寝なさい」

「……?」


 羊角の少年は一瞬、意味が分からなかった。

かんたん次回予告!添い寝!

読んでいただきありがとうございます!

遅くても3日ごとに更新予定!

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