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【第3章】ダンジョン攻略狂騒曲_017

 数時間後。

 アルゴノート家が所有する鉱山のひとつ、そのふもとにぽっかりと空いた縦穴の底にて。


「諸君!ついに立ち上がる時が来たのだ!」


 台形の岩の上に立った筋骨のたくましい女戦士が、眼下にひしめく仲間たちを前に演説をしていた。


「あのクソ淫魔が『魔界』から勇猛に出撃した我らを奸計(かんけい)によりこの暗い穴倉の底へと封じてから幾日が経過しただろう……正直おぼえていないが、諸君らが耐え忍んでくれたおかげで、私はこうして『精霊界』の言葉を話せるようになった!」


 女戦士は短く刈った茶髪から飛び出した丸っこい耳を興奮気味にパタパタと動かし、屈強な胸筋に支えられた豊満な胸を野性的なサラシへと押し込め、腰布から飛び出した細い尾をブンブン振って叫ぶ。


「ウオオオオオオオオ!」


 彼女へ叫び返す仲間たちもまた個性的な耳と、雄であれば角を持ち、ワイルドな格好で尾をブンブン振っている。

『精霊界』においては牛頭、あるいはミノタウロスと呼ばれる種族だ。


「言葉を制することはすなわち『文明』を制することなり!と、こいつが言っていた」

「ひいいいい!」


 女戦士は傍らに置いてあった、ロープでぐるぐる巻きにされている哀れな学者の女を片手で掲げる。


「つまり、もう我々は『精霊界』を制したも同然である、ということだ!打って出るのは今だ!」

「あ、あの」

「ん?なんだ」


 もはや物理的には抵抗しない学者の女はしかし、間違いを正さねば、と進言する。


「それはあくまでもこの『ロズワルド卿自伝』に書かれているだけであって、必ずしも今が好機であると示す言葉ではないのですが……」

「……どういうことだ?つまり貴様も我々を騙したのか?」

「いえいえそんなわけではなく!というかそれはあなたの勘違いでして!!」

「じゃあつまりどういうわけだ!!」

「つまり、あんたらがアホすぎて話にならないってことだよ。ウシ女」


 怒りだしたミノタウロスの女戦士と、命の危機を感じ慌て始める学者の女の後ろから、不意に男の声が割り込んだ。


「きっ、貴様いつの間に後ろに!どこから入ってきた!」

「上から」


 足元にぽい、と放られた女学者が「だう」と情けない声をあげるのを気にせず、羊角の少年は真上を指さす。


「そんなことは分かっている!だがここにたどり着くまでには幾人もの戦士が……」

「いや穴の上からここまで飛んで降りてきたんだよ、直接。だれが馬鹿正直に通路なんか通るか」


 ローラッドはばさり、と背に生えた翼を広げて見せる。

 コウモリのような、爪を持つ漆黒の翼は見るからに異形。

 少年は久々に使ったのだが、使い方を多少忘れていても案外何とかなるものである。


「えっちょっとそんなのズルだろ!貴様も戦士ならちゃんと順路に沿って戦士たちと命のやり取りを」

「すまない、時間が無いんだ。誇りとかあったらごめんな」


 ばふん、と。

 舞い降りた『淫魔』から桃色の瘴気が噴き出した。


「なっなんだ……身体が……おかしいっ!?」


 直後、『気薫赤熱』の瘴気を吸った女戦士の身体に耐え難い熱が湧き上がる。


「今だブラッディ」

「おうよ」


 その身をローラッドが掴んで支えた次の瞬間には、彼の影から飛び出した桃色のコウモリがその首筋に食らいついている。

 血液が吸い上げられた女戦士はもはや意識を喪失しかけていたが、さらに羊角の少年はその目を覗き込み、ぱちん、と指を鳴らす。


「これであんたも、あんたの配下も全員この俺、ローラッド・フィクセン・グッドナイトの眷族だ。そして命令する。『力試しならこのダンジョンから出ずにやれ』。以上」

「はいっ❤ローラッド様❤ここに永久の忠誠を❤」

「戻っていいぞブラッディ」

「はーい」


 桃色のコウモリは女戦士の首筋から離れ、羊角の少年の影へと帰還する。

 彼女が噛みついていた箇所には2つの小さな傷跡と、『契約』の紋章が残った。


「えーっとあとはここをマッピングしないと……」

「あ、あの……❤」


 せかせかと岩から降りようとした少年を、明らかに正気ではない学者の女が引き留める。

 彼の瘴気を吸ってしまったのだ。


「わ、わたしもあなたの眷族にしてください❤」

「じゃあここのマッピングやっといて。調査結果は後で取りに来るから」

「はい❤仰せのままにローラッド様❤」


 短く命令すると、学者の女は傀儡と化した女戦士と共に岩から降り、配下も含めてダンジョン内へと散っていった。


「ご主人、やっぱ淫魔の力って何度見ても最低最悪で最高だな」

「……」


 その光景を見届けた使い魔は率直な感想を述べた。


「これ使いまくれば『学園』なんか」

「言うな。俺がいちばん分かってるよそんなのは」


 ローラッドは使い魔の言葉を途中で遮りつつ、軽く地面を蹴って地上に向かって飛行する。


「本当はもっとこう、正々堂々と決闘しながら攻略したかったのに……!」

「騎士道なんぞ貴族の戯言ってな。手段は選ばない、そうだろ?」

「くっ……!」


 自分で選んだ道とはいえ、だ。

 騎士を目指す者としてはあまりにもあんまりなやり方に、羊角の少年はちょっと泣きたかった。


 攻略すべきダンジョンは、あと3つ。

ようやくタイトルと「ハーレム」タグが詐欺じゃなくなってきたかも……?

ローラッドの翼は日頃はありませんが、その気になれば生やせます。もちろん体力を消耗したり、そのほかいろいろな理由で普段の彼は使いたがりませんが。


読んでいただきありがとうございます!

遅くても3日ごとに更新予定!

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