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【第3章】ダンジョン攻略狂騒曲_016

「でもよご主人、実際問題どうするんだ」

「……」


『学園』正門付近。

 流石に冷静になり歩調を落としたローラッドの肩に乗っている使い魔は言う。


「父親をどうにかしないことには、金ぴか女は『ムカつく』状態のまんまだ。根源から断てればいいけど、あのテルとかいうやつは『精霊界(こっち)』の貴族だろ?『学園』の生徒風情が歯向かってどうにかなるもんかな」

「……まあ、方法は後で考えるとして」

「おいおいマジの無策かよ!?」


 驚愕の声を上げる使い魔を、ローラッドは「全く何も考えていないわけじゃないさ」と素早く否定した。


「あいつは俺のプライマル『未解明』に興味があるみたいだった。利用できるかもしれない。それと、この『指輪』だ」


 羊角の少年は右手を軽く掲げた。

 鮮血のような紅玉が朝日に輝く。


「テルはこれを見て『珍しい』と言った。あの手の人間がそれを口に出すと言うのは欲しいって言ってるようなもんだ。うまくやれば『交渉』できるかも」

「でもよ、そいつは『母上サマ』との『契約』によって渡さなきゃいけないものだ。そんな『交渉』に使えるのか?」

「さあな」


 まだ手札も足りなければ、状況も整っていない。

 それでも少年は怒りのままに歩を進める。


「とにかく、手札は一応ある。あとは状況が整えられたら……」

「それを無策って言うんだろ」

「そ、そうかもだけど」


 ローラッドは耳元でハァ、と使い魔のため息を聞いた。


「……まあアレだ。とりあえず目の前のことから何とかしていかないと」


 呼応するようにローラッドもため息をついた時、使い魔は何かに気がついたように「あ」と声を上げた。


「それで言うとだ、ご主人。オレは昨日ずっと影の中でじっとしていただけだから間違っているかもなんだが、一個気になっていることがあってだな」

「気になっていること?」

「いや……まあオレが心配しすぎているような気もするんだけどさァ」

「なんだよ、勿体ぶってないで言え」


 羊角の少年が急かすと、桃色のコウモリはふむ、と少し考えて言う。


「マリュースってやつがいただろ。あいつ、自分の能力のことをちょっと喋ってたよな」

「ああ、あのかっこいい名前のやつな。空間に干渉するとかいう。それが?」

「いや本当、オレも自信ないんだけど」


 やけに溜めたうえで、ブラッディはひとつの疑念を提示する。


「その空間に干渉する、ってのが、うっかり『魔界』と『精霊界』を繋ぐトンネルであるダンジョンを『開通』させることができちゃうとしたら、ちょっとヤバイような」

「……できるかもしれないけど、別に試そうとも思わないんじゃないか?『魔界』のことなんか知らないだろうし」

「でもあいつら、ご主人たちと競争してんだろ?で、金ぴかの父親の頼みもあるから、『人語を話す魔物』とやらがいるダンジョンに会いに行くことになるよな」

「それが?」

「『人語を話す魔物』ってさ、『精霊界』の言葉を話す魔物ってことだよな?もしかして、あのデケエ犬が言ってた『最近なにやら動き出している連中』だったりしねえかって」

「あっ」


 使い魔の言いたいことを理解したローラッドは思わず声を漏らした。

 点と点がイヤな繋がり方をしていく。


「つまりだ。ダンジョンに取り残されて、『精霊界』への進出を試みているようなやつらがトンネルを『開通』させるかもしれない力があることを知ったら、こう、何か企むんじゃないかって……」


 使い魔は自信無さげだが、ローラッドの直感は明確に『ヤバイ』と告げていた。


「……競争だ」

「は?」


 ローラッドは歩きから走りに切り替える。


「とにかくアダミスキー兄妹よりも先にダンジョンを『攻略』して回る!あいつらがダンジョンに行く理由を潰していくしかねえ!」

「了解!」

「くそっ、次から次へと何なんだよ!」


 方策が決まらないのに、やるべきことは山積み。

 主人を取り巻く状況は悪くなる一方だというのに、桃色の使い魔はなぜか今までで一番楽しそうだった。

キリの良さ重視で今回は短めです!


読んでいただきありがとうございます!

遅くても3日ごとに更新予定!

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