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【第3章】ダンジョン攻略狂騒曲_005

『事務室』での手続きから丸々3日が過ぎた朝。

『学園』からそう遠くはない森の中にある、小さな岩場にて。

 ローラッドとエルミーナは、その岩の陰でぽっかりと口を開けている、とあるダンジョンの入り口に立っていた。


「ここが、私たちがバディで攻略する記念すべき最初のダンジョンですわ!そして、これが現在判明している構造と情報!」


 ばばーん、と効果音がどこからか聞こえてきそうなテンションのエルミーナが資料を高く掲げる。

 彼女はいつもの制服ではなく、いつぞやのドレスアーマーに身を包んでいる。


「一応予習してきたんだし、改めて見る必要はねえんじゃねえか?」

「準備は入念であるほどよいのです。『ペンは剣よりも強し』ですわ!」

「微妙に使い方間違ってねえか、その言葉」


 一方、朝イチバンでいまいちテンションの上がらないローラッドもまた、ダンジョン探索用の服を着ている。

 皮のブーツや手袋もそうだが、紛失していたランプなども含めて新たにエルミーナが用立ててくれたものである。


「いいですかローラッド。このダンジョン『猟犬の(ほら)』はアルゴノート家が所有し『学園』に管理を委託しているダンジョンで、その名の通り犬型の『魔物』が生息していますの」

「ケルベロスだろ」

「よく覚えていましたわね!10点差し上げますわ」

「何の加点なんだそれは……ふわ……」


 ローラッドが大あくびしながら放った突っ込みを華麗にスルーし、黄金の令嬢は話を続ける。


「『猟犬の洞』最大の特徴は、まだ『完全踏破』認定をされていないことからわかるように、奥の方に未調査の空間が発見されていることですの」


 これまでの調査から判明しているダンジョンの構造図(マップ)の一角を指さすエルミーナ。

 平たい紙面にそのまま描写できるほどの平面的な測量結果が、その一か所だけ異なっている。


「唯一、地下方向に下るようになっているここの奥にケルベロスたちの巣穴がある。わたくしたちの目的は、この巣穴の調査ですわ。生息しているケルベロスの数などを明らかにすることを期待されていますが、できれば……!」

「俺たちで『完全踏破』するんだろ」

「そのとおりですわ!」


 エルミーナは文字通り爛々と目を輝かせながら、ローラッドの両手を取ってぶんぶんと振った。


「ダンジョン攻略競争、ぜったい勝ちますわよ!」

「相変わらずすごい気合いだな……」

「やるからには勝つ、当然ですのよ!わたくしが功を立てれば、アルゴノート家の名も高まりますので!さ、行きますわよ!」


 興奮している黄金の令嬢はいつも以上に大きな黄金のオーラを纏いながら洞窟へと突進していく。


「……眠い」


 その後ろを、ローラッドはほどほどのスピードで追いかけた。


 ~回想開始~


「競争……?」

「そう。ダンジョン攻略のはやさで競争。あにさまはとても優秀なの。おまえのようなへんたいひつじとはくらべものにならないくらい」

「あ、ああ。そうなんだな。でもなぜ競争……」

「ほら、しんじてない。その目。あにさまの実力をしんじていない」

「どんな目だよ……信じていないというか、べつに興味も無」

「だからわからせる。金ぴかとローラッド。わたしとあにさま。どっちがよりはやく、たくさんのダンジョンを『完全踏破』できるか」

「いや、別にやりたく」

「なるほど……アダミスキー兄妹との競争に勝てば、よりアルゴノート家の名を轟かせられる?」

「あれ、エルミーナさんなんでそんなに乗り気?」

「『勝利無くして名誉なし』、アルゴノート家の家訓ですわ」

「あ、アンナ教官はどう思います?ちょっと危険なんじゃないですか。課題で競争なんかしたら」

「いいんじゃない?そんなに危険なとこには行かないし行けないでしょ」

「ええ……?」

「じゃあきまり。わたしたちが勝ったら、あにさまをてんさいだとたたえろ。あ、あと、その、ふつうおとこはどんなのが好きとか、おしえろ」

「ん?いま最後の方なんて」

「その条件、吞みますわ!それじゃあわたくしたちが勝ったら、アルゴノート家をたたえると約束しなさい!」

「のぞむところ」

「ならわたくしとしても問題ないですわ!勝ちますわよ、ローラッド!」

「えええ……?」


 ~回想終了~


「これでもくらいなさいっ!!」

「キャウウンッ!」

「……んっ」


 ほとばしった黄金の閃光と、三つ首の犬の鳴き声でローラッドは我に返った。

 意外なほどあっさりと到達した、ケルベロスの『巣穴』の中。

「おーっほっほっほ!魔物と言ってもこの程度ですの!?」と得意げに高笑いするエルミーナを、尾を丸めてすっかり怯えたケルベロスが囲んでいる。


 かろうじて発光苔が薄暗く照らしていた程度の洞窟で暮らしている所に、突如太陽かと思うほどの『光』がやってきてしまったのだ。

『魔物』と呼ばれてこそいる彼らは姿こそ異形でも、所詮は動物の一種に過ぎない。

 見ることすらできない者が相手では、いくら凶悪な鋭い爪と牙を持っている凶暴な獣といっても勝てるわけがない。


(頭が3つだから眩しさも3倍か。かわいそうにな)


 ローラッドは『感度自在』を持たない三つ首の犬たちのことを少し哀れに思った。

読んでいただきありがとうございます!

遅くても3日ごとに更新予定!

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