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【第2章】金と羊はトラブルの目印_006

「人を見るなり『厄介』とは、なかなか言ってくれるなァゆりゆりおかっぱちゃん。仲良くやっていこうぜ、なあ?」

「誰があなたたちなどと率先して関わるものですか……!行く先々で問題を起こす『厄災』そのものな振る舞いをしておいて!」


 長身の乱入者は向けられた怒りなど意にも介さない表情でキスティを挑発する。


「ファレニアもあにさまもあそんでもらっているだけ。いまのあなたたちのほうが、よっぽど迷惑な存在にみえるけど」

「そうだそうだ、もっと言ってやれファレニア」

「あにさまはもうすこしつつしみをもつべき」

「アレ、もしかしてオレの味方ゼロ?」

「ううん。ファレニアはあにさまの味方」

「だよな!よかった~!オレもオマエが大好きだ~!」

「はなして」


 大柄な兄にむぎゅむぎゅと頬ずりされ、無表情な幼女はカクカクと揺れる。

 それを睨みつける『親衛隊』御一行様。


(なんだこの状況は……どうやら本当にアホダルい連中に絡まれちまったな)


 こちらを置いてけぼりにしたまま目の前で勃発する言い争いに、ローラッドは思わずため息が出た。


「ローラッド!」


 アダミスキー兄妹と呼ばれた2人と『親衛隊』が睨み合っている隙に、エルミーナがローラッドの元へと合流した。


「先ほどはごめんなさい。まさかキスティさんがあそこまでするなんて思わなくて」

「別にかまわない。あの感じだとあんたが介入しなくても止められなかっただろうし」

「普段はあんなに暴力的ではなかったと記憶しているのですけれどね、どうしてしまったのかしら……あ、でも『強制脱衣攻撃』とか『わんちゃん化』は本当にダメですわよ。アレは洞窟の中で、しかもプライマルでどうとでもなるわたくしだったからよかったのであって」

「わかってるさ。大丈夫、どっちも使うつもりじゃなかった」

「なら良いですけれど……」


 エルミーナは不安げだが、ローラッドは噓などついていない。

『装甲解除』を使うつもりではなかったし、『夢幻夜行』にいたっては悠長に目を合わせてなどいられなかったのだからそもそも発動条件を満たしていない。


(服が脱げる以外のことは起きていたかもしれんがな)


 心中呟いていると「よお、不良生徒1号2号!」とアダミスキー(あに)が2人に向かって叫ぶように呼び掛ける。


「ふたりで仲良く朝帰りなんだって?ハハッ!お盛んなこったな、オレも混ざっていいか?」

「あにさま、ふざけている場合じゃないよ。あいつらは世界の秩序を乱す『悪魔』だよ」


 目の前の『親衛隊』を無視してローラッドたちの方へと歩み出そうとした兄を、ファレニアと呼ばれた少女が袖を引いて止めた。


「『悪魔』ァ?」

「ほら、あの角」


 ファレニアが指差したのはローラッドの羊角。


「『精霊書』で語られる『悪魔』の眷族にそっくり。きんぱつの方も、『悪魔』にゆうわくされて手下になってるんだよ」

「はいはい、『精霊聖教』のおとぎ話はまた今度な。というかオレはその角に用事があるんだよ」

「牧師さまにおこられるよ」

「かまわねえさ」


 大柄な男はぎらつく欲望を隠さず、舌なめずりをする。


「おい不登校野郎、見ないうちになかなか面白そうな感じになってるな。ちょっと『試し』たいんだが、いいか?」


 ぞっ、と鳥肌がローラッドの背を駆け抜けた。

 まるで、肉食獣に睨まれた獲物のような気分だ。


「黙って聞いていればお嬢様を『害虫』と同類呼ばわりとは、その薄汚い口を今すぐ閉じなさいっ!」

「おっと、そんなに怒ることはねえだろ」


 だが、キスティが悲鳴のように叫び介入したことで、ひとまずアダミスキー兄妹の『興味(ターゲット)』は再度『親衛隊』に移る。


「これくらい冗談の範疇じゃん?いちいちカッカすんなって。オマエ、もしかして『アレ』の日だったりする?ハハッ、つくづく女ってのは大変だな!今日は病欠にしてもらった方がいいんじゃねえか?」

「下劣な……!耳が腐り落ちてしまいそう」

「あにさまの声を聞いてくさる耳なら、私が本当に『くさらせて』あげようか」


 とうとう臨戦態勢に入った両勢力。

 その傍でローラッドとエルミーナはとりあえずの状況整理を行うことにした。


「なあエルミーナ、突然乱入してきたあいつらは一体何なんだ?」

「あら、完全に初見ですの?アダミスキー兄妹は『学園』の有名人ですわよ。だいいち、あちらはあなたを知っている風でしたけど」

「前に会話した記憶もなければ、そもそも今日初めて見た。さっき女の方だけは名前を聞いたがな。ファレニアって言ったか?」

「あなたは他の方々との交流をずっと拒否していましたものね。仕方ありません、教えて差し上げます」


 やれやれ、と大げさに首を振るエルミーナ。

 彼女が解説したがりなことはそろそろ見抜けていたので、ローラッドは一応黙って聞いてみることにした。


「男の方はマリュース・アダミスキー。この『学園』で……いえ、この()()で初めて『根源資質(プライマルセンス)』を見出され、研究報告では『特異零番(サンプルゼロ)』と呼ばれている。プライマルの属性は『強化』ですが、その汎用性からほぼ固有の能力とみなされているとか。わたくしたちの2個上の先輩ね」

「へぇ~」


 なんともざっくりとした解説で微妙に要領を得ないが、黒髪の少年にも分かったことがひとつあった。


「2個上なのに俺らに絡みに来てるの……?結構ヤバい人じゃん」

「あまり大きな声では言えませんが、結構ヤバい(かた)ですわよ」

「もう我慢なりませんっ!」


 ふたりのひそひそ話を終わりにしたのは、再び響いたキスティの叫び声だった。

読んでいただきありがとうございます!

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