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【第2章】金と羊はトラブルの目印_002

「とんでもない濃さのクマね。どれくらい寝られていなかったのです?」

「ここに来てからずっと……」


 金髪の令嬢は手を口に当て「まぁ、本当に!?」と驚いた。

 天然の動作なのだろうが、ローラッド目線、かなりわざとらしいお嬢様っぷりだ。


「よく死にませんわねあなた。『魔族』を自称するだけはあるということかしら」

「どっちかといえば朝起きる方がぐぇ!?」


 急に気管を絞められて咳き込むローラッド。

 緩めにしていた制服のタイがエルミーナによって一気に締められたのだ。


「タイはちゃんと締めなさいな、みっともない!」

「窒息死させる気かよ!」

「人間この程度で死にやしませんわ。よぉし、概ね外に出られるくらいにはなりましたわね!」


 満足げに嘆息しつつ、エルミーナは取り出した手鏡をローラッドの目の前に掲げた。

 映っているのは、普段に比べて少々小奇麗な印象の自分。

 そして昨日まではなかった、側頭部に出現したデッカイ羊の角。


 この角が絶対トラブルを呼び込むと考えると憂鬱だったが、彼の目の前に立つ黄金の少女はそうでもないらしかった。


「本当は今すぐにでもそのツノを触らせてほしいけど、時間が惜しいわね。さ、行きますわよ!」

「ちょ、ちょっと待て!」


 ぐいっ、と手を引っ張られ、ローラッドは思わず抵抗してしまった。


「どうしましたの?忘れ物?」

「……あんたはいいのか」

「何が」

「いやその」


 黒髪の少年は暗澹とした返答を喉に詰まらせる。


「別にあんたは、俺を置いて行ってもいいじゃねえか。こんな角が生えてる、サボり常習犯のネクラの……」

「あなたに優しくしておけば、『未解明(アンノウン)』の秘密をもっと教えてくれるかもしれないから」

「……」

「と言えば、納得するかしら?」


 エルミーナは目を伏せたローラッドの両手を優しく包むように握った。

 少年は思わず顔を上げる。


「ダンジョンでの出来事は最悪で、昨晩などひどいものでしたが……せっかくこうして交流があったのだから。わたくし、あなたとはお友達になりたいんです」

「……」

「『人の上に立たず、並び立つものであれ』。アルゴート家の家訓ですのよ!」


 そこにあったのは、太陽のような笑顔だった。

 純真で、善良で。

 (よこしま)な存在には直視できないほどに、眩しく輝いている。


「さ、ボケっとしてないで出発よ!」

「せめて角は隠させてくれないか結構目立つし」

「わたくしと一緒にいる場合、そんなツノのひとつやふたつ誤差になるくらい目立ちますわよ。物理的に」

「ああっクソやっぱ行かない!『学園』にはお前ひとりで……分かった!分かったから光線を乱射するな危ないっ!」



 ------



「あなたって具体的にはどんなことができますの?」

「な、何が?」

「あなたのプライマルのこと。服を脱がしたり感覚を強化したり夢を見せたり、属性的には『強化』が近いのかしらと思って……なんでさっきからキョロキョロオドオドしてますのよ」


『学園』へ向かう道すがら。

 光り輝きながらも堂々と歩くエルミーナの隣で、ローラッドは気が気でなかった。


「な、なあエルミーナ……やっぱ目立ちすぎだ。周りのやつがこっち見てるって。きっと俺の角が……」

「いや、わたくしを見ているに決まっています。あなたの角も立派ですけど、わたくしの方がもーっと立派ですから!注目勝負なら負けませんわよ」

「別に張り合っているつもりはねえよ!?」

「わたくしは普段抑えているだけで、本気を出せば『虹』になれるの。よく覚えておくことね」

「抑えていないと『虹』になっちまうのか……」


 より正確には、周囲は「かの有名な黄金の少女が『学園』の外で謎のヒツジ角の男と朝帰り!?」といったスキャンダル目撃的な意味で騒然としているのだが、当の本人たちが気づくはずもなく。


「というかですね」


 エルミーナは困り顔で、隣を歩くローラッドの顔を覗き込む。


「あなた、昨日もそんな感じでしたっけ?なんというか、すごく怯えているようですけど」

「……朝は苦手なんだよ。どうしても慣れない。気を抜くと押しつぶされてしまいそうな感じがして」


 空高く昇った太陽に温められ、浮かれ始める世界。

 行き交う人の雑踏。その視線。

 ありえないとわかっていても、そのうちの何人かは母親(リリス)の手先なのではないかと思ってしまう。


(これだから他人は苦手なんだ)


 自分でさえもあの大淫魔の手駒に過ぎないというのに。

 どうして他人を信用できるだろうか。

 暗い世界の住人には、陽の光は眩しすぎる。

 本当に、なんか、すごく眩しい……?ちょっと熱いし。


 あまりに眩しいので、ローラッドは独白をやめて少し顔を上げてみた。

 隣を歩く少女が、無言で黄金色の輝きを強めている。

 その光量は地上にもうひとつの太陽が出現したかと思うほどだった。

読んでいただきありがとうございます!

遅くても3日ごとに更新予定!

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