表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/134

【第5章】藍の迷宮と羊の夢_020

「そんで、ここがオマエの部屋?もはやシケてるとかそういうレベルじゃねーぞこりゃ」

「まるで独房……カギもないのにひにくな話……」


 広場での騒動から少し経った夕暮れ。

 とりあえず最低限の家具を揃えました、と言わんばかりの部屋に入った兄妹はそれぞれの表現方法でその殺風景を罵倒する。


「う、うるさいな。とりあえずこれで人目にはつかないだろ」


 いくら拘束を(一時的に)免れたとはいえ、騒ぎの『被害者』は当然いる。

『加害者』があまりに堂々としているといかなる反感を買うか分からないのだ。


 そういうわけで、ローラッドは寮の自室に『歩く厄災』アダミスキー兄妹のふたりを招き入れていた。

 本当はエルミーナの使っている部屋に入れるのが『おもてなし』としては正しいのだろうが、流石に本人の許可なく客を上げるのは躊躇(ためら)われた。


「まあ確かに部屋の内装のことはどうでもいいわな。てなわけで早速だが本題だ」


 マリュースはベッドにドカッと座ると、膝に立てた腕で頬杖をつきながら問う。


「結局よォ、オマエはいったい何でファレニアと一緒にいたんだ」

「言っただろ。あんたに渡す誕生日プレゼントをファレニアと選んでたんだよ」

「あっ、あにさま……」


 ローラッドの言葉に続く形で、ファレニアは着せられた上着の内側に隠していたボロボロの紙袋をごそごそと取り出した。

 その紙袋は学舎通りから引き上げる際に、ローラッドの『装甲解除』によって結び目の全てがほどけて分解してしまった服の残骸から拾い上げてきたものだ。


「これ、なんだけど……」


 藍色の少女が紙袋に手を突っ込んで、そして取り出したのはクローバー形のイヤリング。


 元より藍の色がついていたそれは、しかし、少女が魔性(サマエラ)に乗っ取られている間に『藍色』の毒液にまみれてしまっていた。

 その腐食性に蝕まれ、イヤリングは新品とは思えないほどにくすみ、ボロボロだ。

 ただ、元々塗られていた塗料を上書きしてしまった毒性の『藍色』だけが皮肉に輝いている。


「おっ!イヤリングか、ちょうど最近欲しかったんだよな」


 だが震える手で差し出されたそれを見た瞬間に、マリュースは目を丸くして歓喜の表情を浮かべた。

 兄は『藍色』の毒液が付着したイヤリングを妹の手から躊躇なく摘まみ上げると、いろんな角度からそれを眺めた。


「細かく模様が彫られてるな、これは『妖精』の装飾か?」

「そ、そうだよ。『精霊聖教』のシスターさんたちがやってるおみせで買ったの……」

「どおりでカワイー感じなワケだ。普段のオレなら絶対買わないわ」


 兄の発した率直な感想に、妹はびくっと肩を震わせた。


「ごめんっ。わたしがいいなって思うのを、えらんだから……『祝福』もけっきょくじゅうぶんにはできてないし、やっぱり、いらないよね……?」

「ん?いらねーとは言ってねえだろ」


 マリュースは妹が伸ばした手からサッとイヤリングを遠ざけつつ、それをすでに多数のイヤリングやピアスでギラギラの右耳に手慣れた手つきで着けた。

 金銀の煌めきの中に、落ち着いた(アイ)が確かな存在感を主張し揺れている。


「元々つけてんのがゴールド、シルバー系ばっかりだからな。アクセントが欲しかったところだったんだよ。どうだファレニア、似合ってんだろ?」

「う、うん……!かっこいいよ!」

「そうだろうさ、なんせオマエが選んでくれたからな。最強の男であるオレのセンスにキケンな女視点のセンスが加わったワケだから、これでますますモテモテのヤリ放題になっちまうぜ!ギャハハハハハハハハ!」

「もとからやりほうだいなんかしてないでしょ」

「そうだった……オレ様に見合う女がなかなかいねーからなぁ」

「ざんねんだったね、ふふっ」


 ワザとらしく額に手を当て天井を仰ぐ兄の元に駆け寄り、妹はその膝の上に収まった。


「なあ、俺は何を見せられている?」

「そりゃーアレだ、女をオトすテクニックの実演販売だ。サービスだから、お代はけっこうだ」


 とりあえず大人しく一連のやり取りを眺め終わって肩をすくめるローラッドに、マリュースは膝に座った妹の頭を撫でつつ冗談めかして返す。


「でもまあリアルな話、オマエは俺に頼みごとがあんだろ?ファレニアから懐柔しようとは、考えてもフツーは実行しねえけどな」

「っ……!」


 全部バレている。

 考えてみれば、ファレニアの部屋にはきっとまだブラッディが置いてきた手紙があったのだ。

 ヘタに嘘などついていたら、すぐに見抜かれていたことだろう。


「そうだ。率直に言わせてもらうと、アンタには『魔界』……あいや、異界へのゲートを開く手伝いをしてほしい」


 ここまで来たら隠し事をする意味もない。

 最終的には信じてもらうしかないのだから、とローラッドは思い切って直球勝負に出た。

読んでいただきありがとうございます!

遅くても3日ごとに更新予定!

ゲリラ更新するときはTwitter(@avata_futahako)でお知らせするのでフォローしてね!

あと、評価やブクマ、感想をもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ