275°
ギフトセンターを後にして、あとはといえばレストラン街やフードコートをうろうろする。
ただ、俺の意識はそれよりもあんずが受け取って、いまだに俺に渡していない一つの袋に注がれている。
俺が話しかけてもはぐらかされるばかりで、まだ中身は秘密だそうだ。
そうこうしているうちに帰る時間となる。
「あ、もういかないと」
慌ててあんずはバス停へと向かう。
今はまだ人はいない、代わりに帰る車がたくさん駐車場から出ていく列が見える。
「それで、さ」
「はいっ」
聞くよりも先に、あんずは俺に袋を手渡す。
むしろ押し付けてくる。
ほかの袋で何とかバランスを取りながら、あんずからの袋を杖を持っていない手で受け取る。
「これ、家で空けてね。あ、絶対、ね。今じゃないよ」
念押しを繰り返すあんずは俺の顔を見ていない。
そして押し付けた袋以外をひったくるかのようにして俺から奪い取っていく。
「なあ、これって」
聞いて質問をするよりも先に、バスがバス停へと滑り込んでくる。
「ほら、帰らないと」
結局、バスの中では俺はこの箱について何も聞くことができず、もんもんとした時間を過ごすこととなった。




