52/59
269°
1時間後、俺は杖を突いていない腕が痛くなるほどの大きな袋を肩にかけていた。
「なあ、ちょっと休憩しないか?」
ふぅふぅと息も少しずつ荒くなってきているが、あんずは一向に歩みを止めない。
「ああ、ここだ、ここ」
と、立ち止まったと思ったらそこは手野ギフトセンターと書かれた店だった。
テナントとしては2店舗分の面積を占めているここには、店員のほかには2、3組の客しかいない。
「予約をしていた久崎あんずです」
「久崎様ですね、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
にこやかに店員が迎えてくれているが、何のことか全くわからない。
言われるがままにカウンターの一つへと通された。




