179°
「おや」
そんな思考に割り込んできた、一人の人物。この真っ暗なところに訪れた唯一の光明。
「……だれ?」
考えはまとまらない。あまりにも人と離れすぎていたからだろう。死んだと思っていたから、ここで出会ったのも人とは思えない。
「そうだな、私は人ではない。君の考えの通りだ」
思ったことが聞こえる?
「ああ、君の考えの通りでいい。今、君がどのような状況になっているのか、ということについて興味があるんじゃないか」
そうだ、しんで、ここに……
「いやいやいやいや、君は『まだ』死んではいない」
「まだ?」
思考と口が同時に動く。
「そう、まだ、君は、死んでいない」
地平線から光が差し込む。生きている?その感覚は徐々に強くなる。
「そうだ、君は、今、新たに生きようとしている」
光は強くなる。暗闇はもう足元にしかない。地平線全部から一斉に太陽が昇ってくるかのように、ただ眩しさだけが、そこにはあった。
「今、君がいる。今、彼女がいる。今、どうなっている?」
そしてその存在は、右手を軽く上げて、指をはじいた。
瞬間、光の爆発が、体の全てを融かした。




