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位相  作者: 尚文産商堂
18/54

78°

 朝飛び起きる。時間を確認すると7月4日月曜日、午前6時くらいか。いつも起きる時間よりも少し早い。ただそれが気にならないくらいに、なんだか気分は落ち込んでいた。特大ため息を一つ、それからベッドから無理やり体を引き剥がす。ゆっくりとしたモーションで、何か世界が動いていく。これがただの寝起きなだけというわけじゃないのは、すぐにわかった。ただ、なんでそれが起きているのかはわからない。

「よっと」

 気合を入れて、ようやく腰掛けていたベッドから立ち上がる。異様に体が重く感じているのは、どうにも天気のせいかもしれない。予報では小雨あるいは曇りとかいっていたはずだが、朝起きてみると実際には霰が降っている。それも結構な激しさだ。天気予報は最近はよく外れる。これも何もかにも、きっと地球温暖化ってやつが悪さをしているんだろう。ガシャンガシャンと音を立てて振り続けている霰の音を遮るように、俺は日課になっているラジオをつける。昔からラジオは好きだった。初めて買ってもらったのは幼稚園の頃だった。そして今、高校生になっていて、今使っているラジオは3代目だ。手野グループのものを使っているが使い勝手がいい代わりに、スイッチが壊れやすい。修理を繰り返していても結局使えなくなっていく。でもこれ以上にフィットするものがないからこそ、このシリーズを使い続けている。

「では、欧州大戦もまだ続くというのですね」

 ラジオから流れてきたのは、政治の話題のようだ。確か、もうかれこれ10年近く続いている、欧州が3つのグループに分かれての戦争だ。

「はい、現時点でこれらの打開策はなんらみえておりません。我々は、彼らとは一定の距離をとりつつも、しかし、早期にこの大戦を集結するように、なんらかの働きかけを行っていかなければなりません。また、他国をこの平和協議に巻き込むことも重要です。特に日米が軸となり、新たな平和を希求することは、今後の国際政治を担う我が国にとって、この上なく必要なことになるでしょう」

 政治のことはよくわからない。だが、戦争は早く終わって欲しいとは思う。もっとも、この戦争が始まった理由も忘れてしまっているが。


 ラジオを流しながら、今日の予定を確認する。高校で支給されている生徒必携は、前半部は校則や規則集、後半は日記帳となっていて、最後に数ページのメモ帳がついていた。今日はというと、高校の創立記念日とある。そうなれば今日は休みだ。規則にもそう書かれている。デジタル的なものが失われつつある今は、こういった紙の、物理的なものが一番簡単に情報にアクセスできるものになっていた。

「てことは今日は休みかぁ」

 言いながら、手帳を机に放り出し、ベッドへとゴロンと横たわる。そして天井を見上げた。遠くの世界のことなんて俺にはわからない。でも、今のところは関係がない話だ。気にすることなんてない。どうせ世界はつながっているといっても、気にならなくなるぐらいの遠い関係なんだから。そんなことを考えていると、うとうとと眠くなり、そしていつしか眠ってしまっていた。

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