60°
何をしているのか、俺からは見えない。
だが、どこか実験室へと連れていかれているのは、ストレッチャーの上に載っていながらもわかった。
ドラマか何かで見たよりかは段差も少なく、ガチャンと上下に動くことはごくごくまれだった。
――部屋番号を確認
――オメガ、ゼロ、ヒト、フタ、ナナ。部屋番号確認できました。入室します
この病院がかなり大きいことは知っていたが、こんな実験室が併設されているなんてことは初めて知った。
部屋の中は暗かったが、電源を入れる音がすると、ブゥンとハム音が聞こえ、それが次第に小さくなってく。
同時に、ゆっくりと部屋全体を照らすかのように電気が明るくなっていった。
――装置は
――準備済みです。管理官にも伝えたので、もうすぐ来ると思います
――倫理委員会は
――あらかじめ通知しておきました。管理官が来るころには緊急承認の連絡が来るかと
何の話をしているかは知らないけども、何か重大な話をしている気がする。
――患者を装置へ
――分かりました
看護師に医者が指示をしながら、何かしらの準備をしながらも、俺の体を、まるで竹を半分へと切ったかのような、そうだ、酸素カプセルの蓋がついていないものの中へと入れられる。
そこへと体中にいろんなセンサーを付けられた。
――もう一人は?
――もうすぐきます
それが誰かなのは明白だった。