26°
朝だ。朝は憂鬱さを連れてきてくれるから嫌いだ。
「ふぁ~」
あくびを一つ、ベッドに腰掛けつつも自然に出てきた。外からの雨音はたんたんとした日常を知らせてくれる。憂鬱さにさらに拍車をかける調べは、ただただお布団の中に俺を連れて行こうとする。
いけない、と首をブンブンと左右に振って眠気を振り落とすと、一気に立ち上がった。日付は7月4日月曜日。今日は週の初めだ。つまらない学校の始まりの日だ。
学校へと歩いていきながら少し昔を思い返す。昔は仲良しにしていた女子もいた。ただ彼女は小学校のころに引っ越して、以来会っていない。たしか、名前は久崎あんずといったはずだ。帰ってきたらまた昔のアルバムか何かを探しておこう。
高校へ通い、つまらない授業を聞いて、それから部活へと進む。高校生活の中だったら部活が一番好きだ。陸上部で短距離走選手としては知っているときには、諸々のものを忘れさせてくれる。ランナーズハイみたいなことなのかもしれないけど、今の俺にはそれで十分だ。
家に帰ると母親が俺宛の封筒を渡してくれる。宛名をみると、朝考えていた久崎あんずからだ。
「へぇ、懐かし」
思わず声が出てしまう。
「あんたよく遊んでいたでしょ。それで懐かしくなって手紙書いてきてくれたみたいね」
「後で読むよ」
そういってそれをもって自室へと戻る。封筒はそのあとどうしたか、机の上において、確か引き出しか何かに埋めた気がする。結局のところ、読まなかった。