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四、迷宮の隣にある町

四、迷宮の隣にある町


「えーっと、ここはレンズ迷宮だよ」

レンが答えた。


「で、お姉さんは?」

リンが聞く。


「私は冷夏だ」

ソイツは答えた。

冷夏というらしい。


「レーカね」

リンはうなずいた。


(ん? 私、今、何語で話してるんだ?)

冷夏はふと気付いた。

口の動きが日本語とは異なっている。


「ところで、君らは何語で話してる?」

冷夏は率直に聞いた。


「へ?」

リンは頭に「?」マークを浮かべている。

「ガタル語だよ」

レンが答えた。


「ガタル? 聞いた事ないな」

冷夏はつぶやいた。


「あなたも、しゃべってるじゃん」

レンが指摘した。


「む、そうなのか?」

冷夏は眉を潜める。

どうやら神々の秘術で言葉は話せるらしい。


「本の類いは持ってるか?」

冷夏は続けて聞いた。


「あるけど」

レンは荷物の中から本を取り出した。


「読めない」

冷夏は本の表紙に書かれた文字を見て、肩をすくめた。


『おー、忘れとったわい』

どこからか声が聞こえてきて、


ポン


と軽い音がした。


「ん? 『冒険者の手引き』……読めるな」

冷夏は次の瞬間、文字が解るようになっていた。


「え?」

「はあ?」

リンレンは何が起きたのか分からないって顔である。


「ま、読めるようになったってことだな」

冷夏はポーカーフェイス。



3人は迷宮を出た。


食糧、プロテクト・ジュエルなどのアイテムの残りが心許ないのが理由だった。

レンズ迷宮にはアンデッドが多く徘徊している。

神聖魔法使い、つまり僧侶が仲間にいないパーティーだとアイテム頼りになる。


魔法によっては効果があるが、アンデッドは魔法抵抗が高い場合が多い。

従って魔力消費も高くなる。


一定の金額は掛かるが、アイテムに頼った方が魔力を無駄にせず、効率的に戦える。

アイテムは戦士などの魔法の使えないクラスであっても使用できる。


「今回の稼ぎはそこそこかな」

リンが言った。


「んー、そこそこじゃあなぁ…」

レンが渋い顔をしている。


宿屋に部屋を取っている。

2人ともバックパックから荷物を取り出して戦利品を数えている。

戦利品は、美術品、硬貨、貴金属が主である。

これらを売って金にする。


迷宮の側には町がある。

町には冒険者相手に商売をする人々が住んでいる。

宿屋、道具屋、武器屋、食料品店、魔法関係の店まで、冒険者に不可欠な店舗が並んでいる。

ほぼどの店でも買い取りをしている。


今回も戦利品を売り払って金にした。

そして、次回の探検に必要なアイテム、食糧などを購入するといくらも残らない、というワケだ。


「武器を研ぎに出したり、防具を修繕したりするとトントンだね」

リンはベッドに寝っ転がった。


「もっと稼ぎがあればいいんだけど」

レンは椅子に座ってお湯を飲んでいる。

白湯というヤツだ。


お湯の入ったポットは宿の客に毎日提供される。

宿代に入っているのだった。


「お茶はないのか?」

冷夏は聞いた。

現代日本で暮らしていた冷夏には、白湯は慣れないのだった。


「お茶は高いのよねー」

レンは口を尖らせている。


「あ、そうか」

冷夏は諦めた。

怪異である冷夏は、特に飲み食いしなくても問題ない。


「ところで、レーカはなんで上から落ちてきたの?」

リンが聞いた。


「私は別の世界から来たんだ」

冷夏は答えた。


「うーん?」

「別の世界?」

リンレンは目を丸くしている。


「それって天界ってヤツ?」

リンが冗談混じりに言った。

「まさか」

レンが笑い飛ばす。


「あんた獣人だろ?」

リンが聞いた。

「まあ、そうだな」

冷夏は曖昧にうなずく。


「獣人はこの辺じゃ珍しいんだよね」

レンが言った。


「そうなのか?」

冷夏はキョトンとしている。


「獣人の国はもっと南にあるからねぇ」

リンがごろりと仰向けになった。


「この国のことを教えてくれ」

冷夏は言った。


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