三、親方、空から怪異が落ちてきたよ
三、親方、空から怪異が落ちてきたよ
ずずーん!
派手な衝撃音。
ホコリが飛び散り、周囲が見えなくなる。
『ウワッ!?』
『何ダ?』
『見エナイッ』
フィーンドたちも物質化している時は目に頼っているらしく、リンレンを押え続けられなくなっている。
「今のうち」
「チャーンス」
リンレンは、その隙に拘束から抜け出す。
数秒でホコリが散って、落ちてきた者の姿が見えてきた。
声を発していた事から生き物らしいことが伺える。
「ここが異世界か…?」
そいつは言った。
「砂鳥のジジイ、いきなり飛ばしやがって」
そして、ブツブツと何かつぶやいている。
長い黒髪。
切れ長の目、細長い瞳。
珍妙な形の白いマスクをしている。
身体は長めのコートに覆われている。
(獣人?)
リンは思った。
(それにしては、身体からあふれ出ている魔力が…)
「コイツ、めっちゃ魔力が出てる」
レンが横で話しかけてくる。
目はソイツから離さない。
「何だろう、コイツ。獣人みたいだけど…?」
リンは聞いた。
「それにしては化け物じみた魔力だよね」
レンは首を捻っている。
『何ダ?』
『変ナノガ来タゾ』
フィーンドたちがザワつき始めた。
霊だけあって、魔力には敏感らしい。
気圧されている。
「変じゃないよ!」
ソイツが言うと、
『ギャッ!?』
『コワイ!』
フィーンドたちは引いた。
「なんだよ、女性に向かって!」
ソイツはプンスカという感じで怒っている。
『オマエラ、何ヲビビッテンダ?』
どこからともなく一回り大きなフィーンドが現れた。
『ア、ボス』
『アイツ、ナンカキモインデ…』
『コワイッス』
フィーンドたちは自然とボスの回りに寄っていた。
「キモイとか言うな!」
ソイツは怒鳴って、フィーンドたちに近づいてゆく。
『ウワッ』
『コッチキタ!?』
フィーンドたちは、ざわめいた。
『ウロタエンナ!』
ボス格のフィーンドが一喝。
『オイコラ、ココハオレラノシマダゾ!』
ズイッと一歩前に出て、睨み付ける。
「ああん?」
ソイツはボスフィーンドを見た。
ソイツの瞳には恐怖の色が見えない。
落ち着いている。
「なんだ、てめえ?」
ソイツは聞いた。
双方の間で睨み合いがなされる。
先に動いたのはボスフィーンドだ。
だが、ソイツは素早く間合いを詰めて、ボスフィーンドをぶん殴った。
ドガッ
鈍い音が響いて、ボスフィーンドはぶっ倒れる。
そして、スーッと姿が薄れてゆく。
元の非物質体に戻って行ってるようだった。
『ア、ボス、ズルイ!』
『オレモ! オレモ!』
と、フィーンドたちの姿が薄れてゆく。
「逃げた?」
「撃退したってことだよね?」
リンとレンはフーッと息を吐く。
「あー、そこの2人」
ソイツはリンレンを見た。
「あ、はい」
「なんでしょう?」
「ここドコ?」
リンレンがちょっと緊張しつつ聞き返すと、ソイツは言った。