悪役令嬢に転生したみたいですが、せっかく金だけはあるんだからやりたい放題やっちゃおう!
大人気漫画、「ハピラブ」。これを読んでの感想は一つ。
「悪役令嬢、婚約者の浮気相手を虐めたりしないで、とっとと浮気した婚約者を捨てて慰謝料ふんだくればいいのに」
元も子もない。でも、婚約者のいる相手と恋愛ごっこを繰り広げるヒロイン(笑)には感情移入できないし、本当にこの感想に尽きるのだ。
余命三ヶ月。可愛い孫が貸してくれた大人気漫画は、私の好みではなかったが孫の気持ちは嬉しい。大好きな夫は毎日会いにきてくれるし、息子も娘達も暇を見つけては見舞いに来る。孫達は学校帰りに必ず病院に寄ってくれるし、なかなか良い最期じゃないか。
なんだか今日はとても眠い。そろそろ迎えが来るのかな。唯一の心残りは、夫を置いて先に逝くこと。不器用な人だから、ちょっと心配。でも、息子も娘達もあの人を理解しているから大丈夫か。孫達はあれで結構懐いてるしね。
そうして微睡むように意識を失って。
気付いたら、ハピラブの悪役令嬢ベアトリス・コルベールに転生していました。
「何故このタイミングで前世の記憶を思い出したのか…しかも、なんだか前世の記憶に引っ張られてベアトリスとしての意識は薄いし…それでも、ベアトリスとして生きてきた記憶と知識があるのは有り難いけど…」
こんなおばあちゃんを悪役令嬢にしてどうしろっていうんだ、神さま。
「とりあえず…状況確認」
ベアトリスとしての記憶によると、既に婚約者ノーマンとヒロインユリアはラブラブ。お互いに好き合ってるけど、結ばれてはいけないの…みたいな空気に酔ってるらしい。
ベアトリスは幸いまだ行動を起こしていない。まだ虐めてないのはとても良き。これから…明日の朝から虐める予定だったけど。危なかった!
ノーマンとユリアの浮気の証拠は一応持ってる状態。探偵的な人に頼んだ覚えがある。
「…つまり、この証拠を元に慰謝料をふんだくってこっちから婚約破棄出来る!」
おばあちゃん、頑張っちゃうぞ!
ということで朝、ノーマンとユリアの浮気の証拠を持って忙しいお父様の元へ突撃する。
「お父様!こういうことなのでノーマンから慰謝料ふんだくって婚約破棄お願いします!」
「なんだ藪から棒に…平民と浮気!?学生の分際で!?あのガキ、政略結婚をなんだと思っていやがる!?」
「お父様、今こそ決断の時です!」
「…わかった。たっぷりふんだくってやる。きちんと証拠を抑えたご褒美に、ふんだくった慰謝料の半分をお前のポケットマネーにくれてやるから、好きに使え。もう半分は我が家の資産にするがな」
「はーい!お父様大好きー!」
「お前そういうキャラじゃないだろ。まったく…あんまり無理するな。あとはお父様に任せて寝てろ。学園も休んで良い。こんな浮気を許すような学園なら、行く意味ないしな」
お父様はなんだかんだで甘い。ベアトリスの記憶の中のお父様そのものだ。有り難や有り難や。
ということでお父様に任せていたらあっという間に大金をゲットした。半分でこんなにもらえるって、お父様の懐にも同じだけ入ったんだよね?改めて貴族怖い。金銭感覚狂うよ。
ちなみにノーマンは廃嫡されたらしい。無一文で追い出されたと聞いた。彼の家は優秀な弟が家を継ぐので、しばらくは醜聞のせいで色々きついがむしろ将来を考えればこれで良かったらしい。ノーマンは漫画のヒーロー役だけあって能力は高かったけど、それは学業の成績であって侯爵家を継ぐにはちょっと頭が足りないところがあったようだ。まあ、浮気するくらいだしね。
ユリアは平民のくせに特待生制度で入った学園で貴族の子息を誘惑したと、ノーマンの実家から訴えられて多額の賠償金を請求されている。このままだと娼婦に身を落とすしかないらしい。肉親がいないのは救いかな。肉親がいたらそちらにまで責が及ぶし。孤児院は既に出ているから、そっちには迷惑行かないらしいし。
ちなみにこの騒動で優秀だがお金のない平民のための特待生制度はなくなるらしい。まあそうなるよね。未来ある若者たちは可哀想だけど。
「さて、慰謝料を使って何しようかなっと」
家は兄が継ぐし、私は政略結婚の予定が無くなったし、なんだかんだで私に甘い家族ばかりだから私の好きに生きて文句は言われないだろう。
「…うん、イケメンに囲まれた逆ハーレムを作っちゃおう!」
おばあちゃん、実は若い頃そういう系に憧れていた!チャンス!
ということで、領内の別荘をお父様に譲って貰ってそっちで暮らすことにした。名目は傷心したから慰安目的。さすがに本邸で逆ハーレムやったら潔癖症のお兄様に怒られる。
そして、別荘はいつでも使える状態で管理してあったので移り住むには問題ないし生活費は慰謝料から出せるとして。
逆ハーレムをどうやって形成するかが重要。私を崇め奉るようにしたい。
「イケメンの欠損奴隷を掻き集めればいいか!」
欠損奴隷を買えば安いし、イケメンなら最高だし、特級ポーションを買えば欠損や奴隷印なんて幾らでも治せるし。
「よし、別荘に行ったら至急奴隷商を呼ぶか!」
ということで、私の薔薇色の人生が幕を開けた。
「ベアトリス様、マッサージは気持ちいいですか?」
「ええ、極上だわ」
「ベアトリス様、こちらのドレスが大変お似合いだと思いますが」
「ええ、今日はそれを着るわ」
「ベアトリス様、お茶をお淹れしました」
「貴方の淹れるお茶はいつも格別だわ」
右を見ても左を見てもイケメンばかり。それも私への忠誠心の高い最高の元奴隷達。今はふつうに使用人として雇っているけれどね。
「幸せだわー」
彼らの目を見れば敬愛されているのがわかるし、何故か欠損奴隷を解放した聖女として領民達の間での評判も上がっているし、貴族社会でもノブレスオブリージュを貫いたと有名になったし。逆ハーレムの恩恵が凄い。
「ベアトリス様、お茶菓子をお持ちしました」
「カイル!貴方はもう私の婚約者なのよ、使用人の真似事はしなくていいわ!」
「トリスに尽くすのも好きなんだよ。いいだろう?」
「だーめ!」
そして、逆ハーレムを形成するために片っ端から買った奴隷の中に前世の夫そっくりの人を見つけた。というか、多分転生した本人だ。だって話し方までそっくりだもの。なので、即刻欠損と奴隷印を特級ポーションで回復して奴隷の身分から解放して、理解のある親戚の元へ養子に出して婚約者にしてしまった。強引だとは自分でも思ったけど、割と周りの人達は受け入れてくれた。
逆ハーレムは楽しい。でも、カイルといるのはもっと楽しい。今世もそのうち、子供や孫に囲まれて幸せなエンディングを迎えるんだろう。だから、今度は女性の欠損奴隷を買って特級ポーションを与えて、逆ハーレムはおしまいにしようと思う。ただしカイルを取られないように、あんまり美人は選ばないようにしようとも思うけれど。




