1/2
序:グレイラインという男
王国歴1523年5月26日、グレイライン伯の訃報が国中に走った。
彼の王国にもたらした利益というものは数知れず、全統傭兵社ギルドの設立に始まり、あまたの国家企画の創立に寄与し、王国再興の立役者と呼ばれた政財界の重鎮である。
王国中の国民から支持され、持病が悪化するまで政治の世界に居続けた彼の消失は国にとってあまりに大きな出来事であった。
―――これは、そんな偉人の生涯を書き記した一冊の伝記である。
かの偉人の自伝、資料を参考とし、彼の生涯について書き記す。
王国歴1525年5月26日。王国軍参謀指令室室長、グレイン・アンシュバルツ。