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【2巻も準備中!】転生皇女はセカンドライフを画策する  作者:


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81 レナードと気苦労


「陛下。午餐の用意が整いました」



振り向くと、レナードが二人を呼びにやって来ていた。

「少し早めではございますが…」


そう言うと離宮の居間へとふたりを案内をした。大きな窓に明るい芥子色のカーテンが室内をより明るく見せていた。

磨きこまれた床に緻密な絨毯が敷かれ、小ぶりなシャンデリアが窓から入る陽に輝いていた。


ふたりが席につくと、レナードが給仕を始めた。

「本日は、村でとれた新鮮な野菜と湖の魚のコースでございます。陛下は少し物足りないかもしれませんので、子羊のローストを…」


そう言うと、スープ皿にチューリンからオニオンスープをレードルでたっぷりと注いだ。


「アルヘルム様はお野菜嫌いですが、スープだけはお好きですので…」

「コホン…」

「そう言えば…いつもサラダは私より少ないですわね」

「そうかな…あまり変わらないと思うが…」

「………ハゲますわよ」


アデライーデが小さな声でポツリとつぶやくと…アルヘルムはぷるぷるしながらも平静を装った。


「お好きなチーズをかければ、アルヘルム様はサラダも大丈夫でございますよ。正妃様」


レナードはにっこりと笑ってそう言うと、アルヘルムのグリーンサラダに多めにチーズを削ってサーブした。


いつもより多めのサラダを黙々と食べるアルヘルムをレナードは満足そうに見ていた。


「レナードは、私の幼い頃の教育係だったんだ。今でもレナードから見たらその頃と変わらないらしい」

少し頬を赤くしてアルヘルムはサラダを平らげてアデライーデに言い訳を言った。


「変わらないなどとんでもございません。嫌いなものをテーブルの下に落とさなくなられました」

「!!いつの事だ」


「最後にされたのは…確か…」

「いや…もういい…」



アルヘルムもレナードにかかると、形無(かたな)しである。

いつもより野菜多めの食事を済ませると、アルヘルムはラインハートと警備の話を少しするからと言われて、アデライーデは先に部屋に戻った。


先程の部屋の隣を覗くと、主寝室だった。

天蓋付きの大きなベッドには、アデライーデが何人寝れるのだろう言うくらい広い。


--キングサイズのダブルくらいかしら…。ここまで大きいとベッドと言うよりプロレスのリングね。



寝室と言っても、30畳程の広さがありソファや机も置かれこの部屋だけで生活できるのではないかと思うほどである。

続きには、バスルームや衣装部屋があり造りは王宮とさして変わらない。ただ先王が暮らしていただけあって品の良い趣味で統一されている。



部屋に戻った時に、レナードがお茶の用意をしてアデライーデを待っていた。


「アデライーデ様…お好みのお茶がございましたら、どうぞお教えください」

そう言って紅茶を差し出すとレナードは、そばに控えた。


「レナード…ありがとう。紅茶なら何でも好きよ」

「アデライーデ様は、アルヘルム様と違い好き嫌いはないようで安心いたしました」

「ふふっ。アルヘルム様も野菜以外はそれ程多くはないようね」

「ふむ…大人になられて、誤魔化すのがお上手になられたようですな」


レナードは顎に手を当てうんうんと頷いていた。アルヘルムの野菜嫌いはかなり酷かったようだ。


--裕人も偏食気味だったからね。いつの時代も変わらないわね。



「遅くなってすまない」

ラインハートとの話が終わったアルヘルムは、そう言って部屋に入ってくるとアデライーデの横に座りレナードに紅茶を頼んだ。


「帝国の庭師たちはしばらく居てもらうようになったよ」

「庭師ですか?」

「あぁ、輿入れの馬車の御者達の中に、帝国では庭師や大工をしている者たちがいてね。この離宮の改築を手伝ってもらっていたんだ。改築は済んだのだが庭は少し時間がかかるようだからもう少しいてもらうようになる。君の好みも知っているからね」


「ありがとうございます」

離宮の前庭はきれいに剪定されていて新しい花が植えられていたがまだ未完成のようらしい。


アルヘルムは紅茶を飲みながら離宮の事はレナードに、散歩をしたり外出をする時は必ずラインハートに言って騎士をつけて行くように何かあればすぐに王宮に知らせるようにとあれこれ心配してアデライーデに言い聞かせ始めた。



--アルヘルム様って過保護なのねぇ



「陛下。ご心配はわかりますが、アデライーデ様は子供では無いのですから…」

「まだ成年前だ。目の届かぬ離宮にいるのだから心配もする」

「レナードや騎士達もいますので、大丈夫かと思いますよ」

「それは…そうだが…」


「陛下。ご心配であれば…こちらにいらっしゃる機会を作られては?」

「もちろん、機会はつくる」

「……以前の様に黙って城を抜け出すのではなく、ナッサウにちゃんと伝えてからであればいつでも…」

「……」



アルヘルムは王子時代から城をちょくちょく抜け出して、お忍びで城下町に遊びに行っていた。その度に苦労して捕まえていたのを思い出したレナードは、アルヘルムに釘を刺しておかねばならぬと思ったようだ。


まぁ…以前と違い抜け出す先が離宮なら、ナッサウの苦労は少ないと思うが…。



「善処する…」

こっそり抜け出す気であったようだ…。


アルヘルムが、そうボソリと言った時に騎士の一人が「お戻りの時間でございますが…」と告げにやってきた。



「もうそんな時間か?早くはないか」

「お戻りの時間のようでございますよ」

レナードが懐からとり出した懐中時計を見て追い打ちをかける。



残念そうにアデライーデを抱きしめ、すぐにまた来るからと言うアルヘルムを離宮の玄関で皆で見送ると、レナードは「ナッサウも私と同じ苦労をしそうですな」と呟いた。



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― 新着の感想 ―
[一言] ベッドと言うよりプロレスのリング……確かに白い結婚でなければ時に二人で寝技の応酬(意味深)があるのでしょうから…。
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