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【3/3 2巻発売決定!】転生皇女はセカンドライフを画策する  作者:


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443 きっかけと習慣


ーうう…。お医者様相手に迂闊なこと言えないわよね。


前世でもあまり知られていないが、がらがらうがいが広く国民に周知され風邪の初期予防として周知推奨されているのは日本だけなのだ。


もちろん他の国の人が全くがらがらうがいをしないわけではない。ただ…あまりお行儀が良くない行為だと思われていて、がらがらうがいをするより飴やトローチを舐めるのだ。



以前ちょっと喉がいがらっぽいなと思った時に、がらがらうがいをやったらマリアにものすごい顔をされて「はしたないので」と、注意された事がある。


でも、小学校の時から「うがい・手洗い」の習慣がついている陽子さんは、この習慣を前世のような医療体制が整っていないこの世界にこそ、必要なんじゃないかと思っていた。


うがいで予防できるのは、ほんの初期症状の風邪とか喉の炎症くらいでも「風邪は万病の元」である。高価な薬が買えない庶民にとって、高熱が出るような風邪を引き込まないようにするのは大事なことである。


なのでペルレ島入島時に、手洗いとがらがらうがいをさせるようにアルヘルムにお願いをしていた。もちろん変な顔はされたが、アルヘルムは笑って「義務づけさせよう」と言ってくれた。



で、義務付けられた船員たちの方であるが…、意外にがらがらうがいは受け入れられたのだ。


がーらがらがらがらっ! ぺっ!

豪快に音を出す者


こーっごろごろここっ! ぺっ!

高音や低音をつける者



「俺っちの方の音がデカいぜ!」

「何言ってやがる、俺のうがいは音楽だぜ」

最初こそ、やる意味がわからないうがいに難色を示したが、やってみると意外に楽しい。



どの時代でも、良識ある大人達が眉を顰める格好や行為をやる傾奇者かぶきものやちょいワルに憧れるのは、なにも年若い少年達だけではない。


永遠の少年が多いやんちゃな船員達は、それを面白がったのだ。しかも、海水でやっても良いのだからお手軽だ。


手軽にできて面白いからと、やっているうちに気がついた。なんとなくやった後の喉の調子が良い事に。


そうして、がらがらうがいはあっという間に船員達に広まり、ペルレ島に立ち寄る船員達の習慣になったのだ。



「えっと…。すっ、すっ…すっきりするから?」

「ほう…それは、正妃様ががらがらうがいをお試しになったご感想ですか?」

まさか「日本の衛生習慣ですのよ…おほほほ」とも言えず、ベルグ卿の鋭いつっこみに陽子さんは冷や汗をかきながら頷いた。



「えぇ…ま…」

「こふぉん! こほん!こほん!」

マリアがわざとらしく咳払いをし、アデライーデの後ろから一歩進み出た。



「アデライーデ様は船員に『口ゆすぎ(ぶくぶくうがい)』を広める為、船員達の興味を引くような目先の変わった方法をお勧めされただけですわ。で、ございますよね。アデライーデ様?」

マリアは能面のように座った目でそう言うと、貼り付けた笑顔でアデライーデに笑いかけた。



この世界では、砂糖の入ったお菓子を食べる貴族や裕福な庶民は高価な歯ブラシを使ってお口の手入れをするのだが、甘いものは滅多に口にしない庶民の口のお手入れは食後に口をゆすぐか、指や布でたまに磨くのが普通である。


中でも、元は浮浪児や孤児が多かった船員にはその習慣すらなかった者が多かった。



マリアとしては、アデライーデが貴族のみならず一般的にもあまり褒められない行為がらがらうがいをしていると、ベルグ卿をはじめとするペルレ島の医療スタッフに知られたくなかった。


アデライーデの奇行慣れ(?)をしている自分やアルヘルム達はもとかく、バルクの貴族や庶民の間では美しい外見と所作、そして女神のような慈悲深さと優しさを持つ正妃と言われ、滅多に姿を現さないアデライーデは、ある意味神格化されていると言っても過言ではない。


そう、アデライーデは国民の偶像アイドルなのだ。


確かにアデライーデは可愛らしく美しい。

だがその実態は、なんにでも興味を持ち堅苦しい事は苦手で庶民っぽく、何でもかんでも口にしてしまう一面いちめんを持つ困ったさんである。


食材開発やガラス工房見学では、それが「研究熱心」として良い方向に受け止められている。


が、そのアデライーデが貴族達からしたら眉を顰めるよう事をしているなどと知れたら、一瞬で噂がバルクだけに留まらず帝国の貴族や陛下達の耳にまで走るだろう。


そして、何が足を引っ張るかわからないのが、貴族社会である。マリアはアデライーデの将来に禍根を残すかもしれない噂がたつのは、侍女として絶対見過ごせない。



「ハイ、ソノトオリデス」

余計な事は言うなと言うような黒い炎を背負ったマリアの横で、汗を流しながらコクコクと頷くアデライーデを見てベルグ卿はなにかを察したのか、ほっほっほと笑った。



「さようでございましたか。年寄りという者は些細な事が気になるものでして、失礼致しました。何はともあれ、良い習慣を広めるきっかけは大事でございます」

そう言うベルグ卿の後ろでアルヘルムは笑いを噛み殺し、フィリップはきょとんとしていた。



LIONさんの歯磨き100年物語

https://www.lion-dent-health.or.jp/100years/


西洋の歯磨きの歴史

https://buly1803.jp/blogs/bulytheque/%e6%ad%af%e3%81%bf%e3%81%8c%e3%81%8d%e3%81%ae%e6%ad%b4%e5%8f%b2


虫歯は、砂糖の普及から増え始めたと言われているそうです。貧しい人は裕福な人の入れ歯を作るために抜いて売ったと言うお話もありましたね。


日本では室町時代末期(16世紀)に実用的な木製入れ歯が普及し、仏師が「入れ歯師」として専門化するほど発展していたそうです。



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― 新着の感想 ―
陽子さん、こういう時こそ『母から教わった』と言えばいいかと。 マリアもベアトリーチェに仕えていたワケではないので分からないと思うんですけどね〜(^_^;)
がらがらうがいが普及していくことが予想されて、本当に良かったです。 医療が行き届かない庶民の健康がこれで少しずつでも向上していくのは、非常に意義深いことですから。 >アデライーデの奇行慣れ(?)をし…
どちらかと言えばベルグ卿もアデライーデ様(陽子さん)側の人っぽいので、アデライーデ様とマリアとの遣り取りにおおよその事情を察したのでしょう。 伯爵家出の御典医と、帝国の皇位継承権持ちの皇女で王の正妃で…
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