表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2巻も準備中!】転生皇女はセカンドライフを画策する  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

413/431

413 料理本とカニスプーン

「やったわー! 蟹、捕れるって!!」


フィリップを見送った時に、陽子さんは思わず小さなガッツポーズをした。


前回フィリップの話からノアーデン国にはサーモンがいると確信していた陽子さんは、次なる獲物である蟹の情報がないかとフィリップに探りを入れていた。


蟹の事は知らなかったフィリップは、アデライーデの言葉のままリネアに固い殻を持ち足がたくさんある海の生き物はいないかと手紙で聞いてくれたのだ。


リネアからの返事には、蟹は一年中網にかかるのだが美味しいのは4月~6月と11月~2月くらいのものが美味しくて残念ながら今年は旬が過ぎていると書かれていたらしい。


そして、アデライーデ様がノアーデンの料理にご興味があるのならばとリネアが手紙と一緒に送ってくれたのが、この「ノアーデンの料理 宮廷料理から庶民料理まで」だ。


何でもこの本はリネアから話を聞いた王太子夫妻が文官らに急ぎ編集させて作らせたものらしい。どうりで美しい革表紙に凝った飾り金がついているはずだ。



晩餐を済ませ寝る準備(寝酒の用意)を整えてもらい、いつものソファに腰かけるとワクワクしながら陽子さんは本を開いた。


ページを開く楽しみをとっておきたいから、わざと目次は読まない。



「きゃあぁあああ」

初手からタラバガニの姿蒸しが載っていた。このトゲトゲした甲羅はどう見ても前世のタラバガニだ。説明文にも何種類かいる蟹の中でも群を抜いて美味しく、『カニの王様』と呼ばれると書かれている。


食べ方はシンプルに蒸したカニ身に好みのソースをかけていただくようだ。


横に並ぶたくさんのソースポットにはひとつひとつきちんと説明文が書かれていた。マヨネーズソースをはじめ、ノアーデンでよく使われるハーブ「ディル」を刻んで混ぜたソースやチーズソースなどいくつものソースが並んで描かれている。



「前世でもタラバ様にはお会いしたことあるけど、大抵は冷凍のおみ足だけだったわ。お一人様一杯なのかしら。宮廷料理だからお二人様で一杯はないわよね」


陽子さんはひどく下世話な事を考えながら説明文と絵を舐めるように見て、次のページを捲ると蟹の身をたっぷり使ったクリームシチューやクリーム煮にした蟹身をふんだんに入れたキングクラブパイやキッシュなど、手の込んだ宮廷料理が並んでいた。



「……美味しそう」


この料理本は見開きの左側に料理の絵が描かれ、右側に詳細な説明文が載っている。現世のガイドブックのような感じで写真の部分が手描きの絵…それもかなり写実的な絵で描かれているので、見ているだけでヨダレが垂れてきそうである。


次のページからは、サーモンステーキの魚卵ソース添えやサーモンのプディング(サーモン、ジャガイモ、玉ねぎを卵液で焼き固めたもの)等のサーモン料理が並ぶ。


サーモンステーキの魚卵ソース添えのソースに使われるのはイクラかと思えば、どうも違う魚の卵らしい。



「イクラはどうしたのよ?! イクラは? まさか捨てたりしてないわよね」

熱く陽子さんは呟くが、本が応えてくれるわけはない。


好みは分かれるが日本人はエビ味噌やカニ味噌を珍味と言って好む人が多い。もちろん陽子さんもカニ味噌もエビ味噌もイクラも大好きである。滅多に口にできないからかもしれないが…。


興奮気味にページを捲ると、次のページにスモーガストルタという名前のいくらとサーモン、ハーブを載せたオープンサンドイッチが出てきて陽子さんは安心してワインをぐびりと口にした。



「良かったー! ちゃんと食べられているのね。捨てられてたらどうしようかと思ったわ」

スモーガストルタはオープンサンドイッチというより見た目はケーキっぽい。昔、薫のひな祭りに作ったすしケーキに近いものがあると思いながら陽子さんはページを眺めていた。



そうやってしばらくすると宮廷料理のページは終わり、庶民の料理のページになった。素朴で飽きのこない陽子さんにも手軽に作れそうな料理のページが並ぶ。



「へぇ。ノアーデンではザリガニもよく食べられているんだ」

以前アルヘルムに連れて行ってもらった茹で海老のお店で見たような、海老の代わりにザリガニがてんこ盛りに盛られた皿のページがあった。庶民には蟹よりザリガニの方が手軽に食べられていると書かれている。



「そう言えば、北欧家具のお店のフードコートにザリガニがあったわね」

お手頃価格なら珍しい料理はお腹のスペースに空きがある限り詰め込む陽子さんは、そのフードコートにあるめぼしいお料理をほぼ詰め込んでいた。


その中にはもちろん茹でザリガニも入っている。味が濃くて美味しかった覚えはあるが、如何いかんせん蟹に比べて小さくて身が取り出しにくかった。


しかも対ザリガニの武器はフォークしかなかったのだ。それを知っていれば家から『あの』スプーンを持参したのに。



「王様達が食べる時には必要ないかもしれないけど、ザリガニを食べる時にはあった方が良いわよね。だって、あんな小さな身を綺麗にほじるのは難しいもの。まぁ料理人の人達に使ってもらえればいいかな」



陽子さんはワインを飲みながら明日マデルに正式名称『蟹甲殻類大腿部歩脚身取出器具(かにこうかくるいだいたいぶほきゃくみとりだしきぐ)』と言う名のカニスプーンを作ってもらおうと思いながら本を眺めていた。


https://sigva.se/recept/lax-med-romsas/

サーモンソテーと魚卵ソース


https://hokuogohan.fukuya20cmd.com/2023/07/17/10699/

スモーガストータを紹介されているページです。

ものすごく美味しそうです!



2巻準備中と告知して良いと許可が出たのでお知らせします!\(^o^)/

まだ発売日は未定ですが準備してますー!

これも皆様のおかげです!

ありがとうございますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
本はやはりアデライーデのための特注品でしたか。 王太子夫妻にしてみれば、正妃と誼を通じる貴重な機会ですから、気を入れたことでしょうね。「黄金の正妃」であり、その背後には帝国もいるのですから。 国益の上…
アデライーデさん所もといバルクに届ける方法を考えねば絵に描いた餅ならぬカニなきカニスプーンに なってしまいますね〜 アデライーデさんは蟹を食べることができるのか………
ノアーデンからどうやって蟹を持って来るんだろう?鮭は燻製や塩蔵干物が思い浮かぶけど。 陽子さんがどんな食材でどんなメニューをって想像すると楽しすぎて、妄想に熱が入ります。単に食いしんぼうだからなんです…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ